そうして、ある時は彼女たちに直接、ある時は店のママやチーママに協力を仰いで、彼女たちの連絡先や自家用車を所有しているかどうかを聞き出していった。

タニアで働く女性たちのデータベースを構築

日本駐車場開発の川村憲司副社長

 タニア通りには自走式の大きな立体駐車場がある。しかし、夜間にはここがほとんど使われていないことに気づいたのである。そしてカラオケスナックで働く自家用車を持つ女性たちが、駐車場に困っていることも聞いていた。

 そこで、いったいどれだけの女性たちが自家用車を持っているのかを調べてみることにしたというわけだ。そして、驚くべきことに約2割の女性たちがすでに自家用車を保有していることが分かった。2割といっても、360人以上になる。

 それならニーズはある。川村副社長は確信したという。深夜勤務になる彼女たちにとって自家用車での通勤は有難い。しかし、繁華街の一等地で長時間止めておくには駐車料金が高すぎた。

 川村副社長は、彼女たちの声をまとめ、また彼女たちの自家用車保有比率などのデータを駐車場のオーナーに持ち込んで、深夜は格安料金で駐車できるように商談を重ねた。

 結果は、成功。駐車場のオーナーにとっても、深夜はほとんど空っぽになって商売にならなかったのだから、たとえ昼間の数分の1でも料金が入ってくるのは大きい。何しろ相当数の女性たちが働いているのである。

夜の犯罪防止にも一役買う駐車場

 当然、川村さんはこの駐車場の管理運営も任されることになった。駐車場のオーナーも女性たちも喜ばせて、そして日本駐車場開発も事業拡大に結びつけることができた。

 しかし、話はこれだけで終わらない。立体駐車場まで短い距離とはいえ、繁華街から暗い道を歩かなければならなかった。日本に比べればレイプなどの犯罪ははるかに多いだけに、若い女性たちにとっては気がかりな点だった。

 それらの声もあらかじめ聞いて知っていた川村さんは、駐車場と繁華街の間にある商店にかけ合った。深夜はシャッターを下ろしている店の前の電灯を点けてくれるように頼んだのである。

 彼女たちの安全のためにということで、何軒もの商店が次々と電灯を点してくれるようになった。中にはわざわざ新たに明るい照明を導入してくれた店もあった。