前回ご紹介したように日本政府による経済無策と中国経済および政治への不安が高まっていることが重なって、日本企業と個人のタイ進出が爆発的な勢いを見せている。それはこれまでのような製造業にとどまらず、サービス産業の進出ラッシュを呼び起こしている。

日本の大不況はどこ吹く風。進出企業は最高益が続々

バンコクの繁華街、サイアムセンター前の交差点

 タイ進出の草分け的存在と言える大手ゼネコンは、もはや政府による災害と呼んだ方がいい日本の大不況はどこ吹く風。どこも史上最高益を更新している。

 そればかりか、受注が多くてこれ以上の新規案件には応えられないような状況だという。

 そうした状況を反映して、バンコク郊外や地方に造られてきた工業団地はどこも満杯になりつつあり、製造業が日本からあるいは中国からの移転を希望しても、簡単には用地が見つからなくなっているそうだ。

 「本当にタッチの差でした。ラッキーだったですね」と話すのは、昨年(2010年)7月に事業を始めた日本駐車場開発の川村憲司副社長だ。

 「いま、ここにお茶を出してくれた若い女性がいるでしょう。彼女はTOEICがほぼ満点なんですよ。日本語はもちろんほぼ完璧に話します。また美女でしょ。彼女のような人材をいま見つけようと思っても不可能だと思いますよ」

 川村さんにインタビューするためにバンコクオフィスを訪れた時、応接室へ案内してくれたタイ人の美人秘書のことを指している。

人が人を呼び、進出の加速に歯止めがかからない

 日本語と英語を流暢に話す若い人の給料は1カ月に2万8000バーツほど、日本円にして約8万円だという。しかし、トヨタ自動車のようにタイ人が就職したい企業ナンバーワンの企業は別として、いまは残念ながら日本語をきちんと話せる人材を見つけるだけでも至難の業らしい。

 「ちょっと異常なブームという感じですね。何でタイに来たいのか目的がはっきりしない企業や仕事を求める人たちが、ここに大挙して押し寄せているんですから」と川村さん。

 人が人を呼ぶと言うが、まさにそのような状況なのだろう。輸出産業という限られた業種から、これまでは日本国内が中心で日本の産業の7割以上を占めるサービス産業が進出し始めたことで一気に加速していると考えられる。

 もちろん、進出しても事業が軌道に乗らず撤退する企業が相次げば、その熱はすぐに冷めてしまうだろう。しかしチャンスは確実に広がっている。その事例をいくつか紹介したい。まずは日本駐車場開発に焦点を当てよう。