先週、兵庫県の観光関連の委員会に出席をしたのだが、今、関西の観光が壊滅的な状況にあるらしい。
折からの不況の波の中、今年の5月に新型インフルエンザが兵庫県内で発生したことから、修学旅行が相次いで中止になったり、個人のツアーもキャンセル続出になったりで、来場者が急激に落ち込んだ。兵庫県の有馬温泉では客足が9割減という週末もあったらしい。さらに中国や台湾などアジアでは日本への旅行自粛が続いており、いまだに回復が見込めないという。
こうした状況は兵庫県だけではなく、京都府でも修学旅行のキャンセルが合計で20万人近くになるなど、関西全体に及んでいる。
国際観光旅館連盟近畿支部がまとめた5月末までの宿泊キャンセル状況によると、一般旅行、修学旅行を合わせた近畿6府県でのキャンセル人数は合計で約43万5000人に達し、損害額は約47億2000万円と試算している。
格安プランを利用する消費者心理とは
この新型インフルエンザも、発生してからまもなく2カ月が過ぎ、ようやく一段落したようだ。しかし、まだ客数は例年より1~3割程度減少しており、完全に回復したわけではない。
そこでホテルや旅館が打ち出しているのは、巻き返しのための格安プランだ。ある大手ホテルでは「6月だけでは5月の落ち込みはカバーできない。夏の観光シーズンに向けて格安プランを続け、なんとか稼働率を回復させたい」と語る。
ところが、この格安プランに問題がある。確かに客足が鈍った時に、割引プランを打ち出すことがよくある。チラシや広告宣伝などを使い、大々的に打ち出せば、それなりに効果は見込める。スーパーの特売と同じ効果だ。
ところが勘違いしてはいけないのは、こうした安売りの効果である。マーシャルの需要と供給の法則によると、価格が安ければ販売数は増えるという。ところが、これは需要が一定だったとした場合の法則だ。
安売りをするメリットとしては、まず、これまで購入したことのない人が、新たに購入してくれる効果がある(新規顧客獲得の効果)。それと、態度を決めかねている人に決定を促す効果がある(浮動層の購入促進効果)。しかし、これらは中長期に見て、プラスにならない場合があるので要注意だ。
ホテルや旅館は空室にしておくより、5000円でもいいから部屋の稼働率を上げた方が経営効果がある。それで新しい顧客が獲得できれば一石二鳥、と言いたいところだが、消費者からすれば、いったん安い金額で泊まった人は、次は高い料金で泊まろうとはなかなか思えない。
これが消費者心理なのだ。安い金額で獲得した客は、安い金額でしか泊まってもらえない客なのである。