30年前に「改革開放」政策が実施された直後から、中国人はテレビや映画などで富士山を背景に走る日本の新幹線を見て、中国でもいつか日本の新幹線のような高速鉄道ができればと夢を描いていた。それから30年経ち、その夢は中国版新幹線の高速鉄道によって現実のものとなっている。
中国政府が打ち出した新幹線構想は、主要都市間の「高速鉄道網」の建設である。具体的には、2020年までに縦4本と横4本を建設しようというものだ。
まず縦4本は、(1)北京~上海、(2)北京~香港、(3)北京~ハルピン・大連、(4)上海~杭州~深センである。そして横4本は、(1)青島~太原、(2)徐州~蘭州、(3)南京~成都、(4)杭州~長沙である。
中国政府が中国版新幹線を造る背景に、経済成長と共に増える旅客輸送の需要増がある。経済成長がスローダウンしてからでは、新幹線を造りたくても造る財力がなくなってしまう。経済が右肩上がりに成長している段階のうちに、新幹線を建設しなければならない。したがって、中国政府にとっては新幹線建設を急ぐ必要があるのだ。
欠如する総合運輸システム建設のグランドデザイン
自動車が急増する中、中国政府は道路インフラを整備するため、高速道路や橋梁などの建設に民間資本を取り入れる「BOT(Build Operation Transfer)」という建設モデルを推進した。同時に、民間航空産業の発展を促進するため、新規参入を認めた。かつての民間航空総局(CAAC)による航空産業の支配は打破された。
その一方、なぜか鉄道に対する政府の支配は、そのまま維持されている。今でも、鉄道の建設と運営はすべて鉄道部(省)によって独占的に行われている。