瀬戸内海に浮かぶ小さな島、香川県の小豆島は、オリーブの日本一の生産地である。

 島を訪れると、オリーブ畑だけではなく、幹線道路わきはもちろん、一般家庭の庭など、島のあちこちにオリーブの木が植えられて、地元の生活と一体化している。その景色は、まさに「オリーブアイランド」の様を呈している。

 秋の終わり頃には、赤く熟したオリーブの実が、紅葉やミカンのオレンジ色と相まって輝いて見える。まさに収穫が始まらんとする時期だ。

赤く熟したオリーブの実

 2007年、「小豆島オリーブオイル」が、10番目の「本場の本物」の認定を受けた。「本場の本物」とは農林水産省の外郭団体である財団法人食品産業センターが、2005年度から認定を行っているもの。

 日本各地で伝統的に培われた「本場」の製法と、地域特有の厳選された材料を使って「本物」の味を作り続けている食品を認定する。

 厳しい審査を経て認定された食品は、まさに「消費者にとって安心して使うことのできる本物である」とのお墨付きを得たことになる。

約100年前、イワシ加工用に栽培スタート

 小豆島でオリーブが作られるようになったのは、今をさかのぼること約100年前。1908(明治41)年にイワシなどの油漬け加工に必要な油を国内で確保するため、香川、鹿児島、三重で試験的に栽培したのが始まりだったらしい。

 ところが、香川、鹿児島、三重の中で、オリーブが根付いたのは小豆島だけだったという。小豆島の気候は1年を通して温暖だ。また、丘陵や山が多いため水はけがよく、夏は日差しが強く乾燥する。地中海によく似たそんな気候が、生育の条件にピッタリだったのだ。

 ただし、小豆島のオリーブ栽培は、これまで順風で来たわけではない。1959年にオリーブの輸入が自由化され、外国産の安価なオリーブオイルが上陸するようになると、高値の国産はたちまち太刀打ちできなくなり、栽培は一気に衰退してしまった。

 また、オリーブ栽培では天敵の「ぞうむし」対策を欠かすことができない。さらには元々根が弱いこともあって台風による倒木被害を受けやすい。そうした手間から、オリーブ栽培をやめて、他の柑橘類の栽培に移行する農家も多かった。

 その結果、80年代後半になると、栽培面積は64年のピーク時(約130ヘクタール)の約4分の1にまで減ってしまったという。こうして一時期、小豆島のオリーブはすっかり影を潜めてしまった。