日本の雇用情勢が一段と悪化している。30日に総務省から発表された5月の完全失業率は5.2%(前月比+0.2%ポイント)。過去最高である5.5%に、また近づいた。厚生労働省から同日発表された5月の有効求人倍率は0.44倍(前月比▲0.02ポイント)で、過去最低を更新した。これまでの最低は、1999年5、6月と前回4月に記録した0.46倍だった。

 有効求人倍率を算出する基になる2つの数字、有効求職者数と有効求人数の前年同月比を見ておきたい。

 5月分で、有効求職者数は前年同月比+35.8%。前月の同+36.1%から伸びが若干鈍化したものの、ヒストリカルにみて異例の高い数字になっている。「リーマン・ショック」よりも前の昨年8月には、有効求職者数は前年同月比▲0.9%で、マイナス圏にとどまっていた。ショックが加わった後は様相が一変。9月にプラスに転じ、以降9カ月連続で増加。プラス幅は急激に大きくなった。

 一方、5月の有効求人数は、前年同月比▲35.2%。前月の同▲31.8%からマイナス幅を拡大した。過去2回の景気後退局面を大きく超えるマグニチュードで悪化している点は有効求職者数と同じだが、求人数については2007年2月以降、28カ月連続の減少である。

 以上から、今回の有効求人倍率過去最低更新は、2007年前半からすでに企業サイドで開始されていた求人を絞り込む動きが継続する中で、2008年秋に「リーマン・ショック」が加わり、 (1)企業が非正規を手始めに雇用リストラを加速、(2)将来の収入に不安を抱いた家計の側がパート収入などを求めて求職活動を開始・強化、という要因が重なり合ってもたらされたものだと整理することができる。

 雇用関連の統計を見ていく上では、それが景気循環に先行する指標か、一致して動く指標か、遅行する指標かの区別をしておくのが基本である。

 内閣府の景気動向指数で、先行系列に含まれているのが、新規求人数(除く学卒)。一致系列に含まれているのが、有効求人倍率、所定外労働時間(製造業)。遅行系列に含まれているのが、常用雇用指数(製造業)、完全失業率である。