日銀の中村清次審議委員は24日午前、新潟県金融経済懇談会で挨拶(講演)を行った。日銀が公表した要旨によると、以下のような発言があった(日銀ウェブサイトから引用)。海運業界出身の同委員は、「海」に関連した比喩を交えつつ、日銀内で「本流」となっている線に沿った、慎重な内外経済の見通しを説明した。また、金融政策運営については、「銀行券ルール」を維持することの重要性や、企業金融支援のための臨時措置からの「出口」については慎重に検討・説明していく必要があることを強調した。

【内外経済】
 「世界経済は暴風雨圏からは抜け出しつつありますが、極めて濃い霧の中をレーダーを頼りに、減速航海している状況にあり、引き続き先行きの不確実性は高い状況です」「米国の輸入貨物や国内物流の動きをみても、下げ止まる兆しがなく、先行きの消費の改善の弱さを示唆しているとも考えられます」

 「4月のユーロ圏の鉱工業生産(除く建設)が前月比1.9%減少したように、世界の他の地域に比べると在庫調整の進捗が緩やかになっている可能性があり、生産の底入れや安定化にはまだ時間がかかりそうです」

 「足許、わが国景気は下げ止まりつつあり、4~6月期にかけては、これまでのフリーフォール的な状態からは脱し、前期比でみた成長率はプラスに転換できると思います」

 「ただし、この半年間に経済活動の水準が大幅に切り下がってしまったため、輸出、生産が持ち直したとしても、回復を実感し難い状況が続くと思います」

 「わが国経済は、産業構造や人口動態を勘案すると、内需の大幅な拡大による景気回復のシナリオを描きにくいだけに、引き続き外需に依存せざるを得ません。しかしながら、世界経済の様々な歪みの調整には、かなりの時間を要するとみられるため、海外経済の回復は緩やかなものに止まる可能性が高く、わが国経済の本格的な回復にも相応の時間を要するのではと考えられます」

 「生産設備の廃棄や海外移転が一段と進む可能性も否定できず、その場合、海外経済が本格的に回復したとしても、国内の設備投資が抑制され、雇用環境の回復が限定的となることも否定できません」

【金融政策運営】
 「一般企業が財務体質を安定させるために、流動性と固定性とに分けて、それぞれの資産、負債残高を調整していることと、基本的には同じ考え方だと思います」(日銀の「銀行券ルール」についての説明)

 「『銀行券ルール』は長期国債の買入れが、国債価格の買支えや財政ファイナンスを目的とするものではないという規律を、明確にするという役割も果たしています」

 「実施期限を9月末と定めている措置の今後の取り扱いについては、金融経済情勢の推移をしっかり点検しながら、予断を持たずに検討していく必要があると思います。そして各措置に関する判断については、日本銀行の政策意図が正確に伝わるように、国民や市場参加者との対話に当たって、慎重な対応が必要だと思います」