中国国家統計局は2011年5月の消費者物価指数(CPI)を発表した。前年同期比で5.5%の上昇であり、2年ぶりの高水準である。
物価高騰の背景には食品価格の上昇がある。同月の食品価格指数は前年同期比で11.7%も上昇した。インフレ再燃は低所得層の生活を直撃している。
実は今年に入ってから、国務院と人民銀行(中央銀行)は一貫して金融引き締め政策を実施してきた。金利は大きく引き上げていないが、預金準備率を大きく引き上げ、市中の過剰流動性の吸収に努めてきたのだ。
しかし、これまでの努力はほとんど成果を上げていないようだ。今回、発表されたインフレ率の統計はその証拠である。
中国経済がバブル化しているかどうかは、研究者によって見方が分かれている。だが、物価が大きく高騰する中で、10%の成長を続けるリスクは明らかに大きくなっている。
天候不順と電力料金値上げがインフレ再燃の原因
なぜ政府のインフレ抑制策は機能しないのだろうか。
まず、インフレが高騰する原因を整理してみよう。2010年来、食糧価格はじりじりと高騰し、そのトレンドは今も変わっていない。今年に入り、長江流域で100年に1度の大干ばつに見舞われた。6月に入ると、湖南省や湖北省などの穀倉地帯で豪雨が降り、洪水が起きている。食糧の減産は確実な情勢となり、サプライサイドで問題が起きた。
そして、インフレを押し上げるもう1つの要因は、電力料金の値上げである。一部の省と市で産業用電力が値上げされている。電力料金の値上げはインフレ再燃を一層助長するものと思われる。
なによりも、インフレの高騰はすでに住宅市場に飛び火し、住宅バブルを引き起こしている。
なぜインフレの高騰が住宅市場に飛び火したのだろうか。それは預金金利が2%台であるのに対してインフレ率が5%を超えているため、実質金利はマイナスだからである。