グリーンニューディール政策を打ち出したオバマ米政権に倣い、日本も地球環境の保全対策、すなわちエコロジーを不況脱出の切り札に据えたいようだ。今年に入り打ち出された緊急経済対策の中身も、エコ推進策との合わせ技が目立つ。だが、環境事業は本来、景気対策とは別物ではないのか。

エコポイントが救世主?

 支給日が近づいた夏のボーナスを当て込んでか、先週末の大手量販店の家電売り場は大賑わい。不況で支給額が大幅に減る会社も多いが、大型家電を買い換えるチャンスではある。一方、店側は5月15日導入されたエコポイント制度をしきりにPRしていた。

 エコポイントは、政府が追加経済対策に盛り込んだ省エネ家電の買い替え促進策だ。

 エアコン、冷蔵庫、地上波デジタル(地デジ)放送対応テレビの省エネタイプを買うと、価格の何%分かに相当するポイントが与えられ、後で商品券などと交換できるという。対象製品には省エネに対する性能を5段階で表す「星」が4~5個付いていて、冷蔵庫とエアコンは購入金額の5%分、地デジ対応テレビは最大13%分のポイントがもらえる。

 家電は自動車と並んで裾野が広い産業だから、買い換え需要が高まれば消費や雇用が上向いてくる。古い家電と比べて新型は消費電力が小さいので、環境にも優しい。経済産業省の幹部は「一石三鳥の施策です」と胸を張る。

 しかし、いくら消費電力が少ないといっても、新品の家電は決して安くない。本体価格を見ると低価格モデルの何倍も高く、電気代の差額だけでこの差を埋めるには何年もかかりそうだ。

 また地デジ対応テレビのポイントが、エアコンや冷蔵庫の2倍以上というのも解せない。一般家庭の電気使用率を見ると、エアコンが全体の25%を占めるのに対し、冷蔵庫は16%でテレビは10%にすぎない。二酸化炭素の削減効果を考えるなら、エアコンのポイントこそ高く設定されるべきではないのか。

本来目的と180度違う、ETC高速料金割引

 この春から国が実施しているETC(Electronic Toll Collection System)普及策も同じだ。

 有料道路の渋滞緩和を目的に開発されたETCは、料金支払いの自動化システムだ。クルマやバイクに専用機器を付け、これにクレジットカードを挿入して専用ゲートを通過する。わざわざ停まらなくても、電波で自動的に精算ができるため、渋滞緩和に役立つ。アイドリングによる、二酸化炭素の排出量も減らせる。だが、機器の購入や設置におよそ1万5000円ほどかかるのがネックになり、普及は足踏みが続いていた。

高速ETC、都心は閑散

 そこでETCの利用率向上と景気対策のため、国土交通省が打ち出したのが、高速道路料金の引き下げだ。東京や大阪の大都市圏を除いて、ETC搭載車は土日祝日の高速道路料金が原則1000円で乗り放題、平日も3割引きになった。首都高速と阪神高速も1000円ではないが、休日に割引料金が適用された。

 2009年3月にはETCの新規購入者に費用の一部を補助する施策も始まり、関連機器はあれよという間に売り切れ。助成枠を使い切った今でも、ETC対象の高速料金の割引制度が続いているため、機器は依然として品薄状態。メーカーは増産に追われているが、ユーザーの手に渡るまで数カ月待ちという。

 おかげで休日の高速道路は、行楽に繰り出した家族連れなどで渋滞が恒常化。混雑緩和と環境保全を目指した本来の目的とは、180度異なる状況に陥っている。