アイチューンズ・ストアで取り扱っていない楽曲については、ユーザーの機器からアップルのデータセンターにアップロードする。
アップルはこれについて「照合できない残りのごく一部の楽曲だけをアップロードすればよく、音楽ライブラリ全体をアップロードする必要がなくなる」と説明している。
これにより文書ファイルなどと同じく、ユーザーは自分の持っている音楽をすべての機器で利用できるようになる。
こうしたサービスはミュージックロッカー(音楽保管)とも呼ばれ、先に米アマゾン・ドットコムや米グーグルなどが米国で試験的に始めているが、両社のサービスはアップルのような仕組みがないため、既存の音楽ファイルを全てクラウド上にアップロードしなければならない。この方法では時間と手間がかかり、利便性に欠けると指摘されていた。
収益の7割をレコード会社に
アマゾンやグーグルがこの方式を採り入れなかったのは、レコード会社からの合意が得られなかったからだと米ウォールストリート・ジャーナルは伝えている。
現在ユーザーが持っている楽曲はファイル交換ソフトなどで広がったものも多く、またユーザーが自分の購入した音楽CDからコピーしたものもある。後者は違法ではないが、どのファイルが正規に購入されたものか判別がつかないため、レコード業界は乗り気でなかったという。
しかしアップルはユーザーから得る年間24.99ドルという料金の70%をレコード会社に支払うことで契約を取りつけたと同紙は伝えている。これによりレコード会社は、初めて海賊版の可能性のある楽曲ファイルから収益を得ることになる。
ある業界関係者は、レコード盤からCDへと移行した際と同じ、あるいはCDからデジタルダウンロードへと移行した際と同じくらいの変化がもたらされるかもしれないと話している。
消費者の音楽の買い方、聴き方が変わるとき、レコード業界も大きく変わる。今回の新サービスはそんな予感がするという。
なおこのアイチューンズ・マッチは当面、米国のみのサービスになるもよう。まずは同国で成功を収めることが世界展開の第一歩になると言えそうだ。