前回は、日本の工場にはいまだに「家内制工業」が見受けられるという話をしました。
歴史的に見ると、製造業は、1つの工場内にすべての工程を収め、その中で一貫生産する「工場制工業」へと進歩してきました。ところが、製造中の製品が複数の専門工場の間を渡り歩く前近代的な「家内制工業」が、今もなお残っているのです。
そういう工場は、速やかに工場制工業へと移行するよう手を打たなければなりません。前回も述べたように、リードタイムが余分にかかってしまうからです。
1つの工場で製造を完結せず、リードタイムが膨らむと、どのような弊害があるのでしょうか。今回は前回よりももっと詳しく、定量的に見ていきましょう
製造と販売の間に在庫がたまる
多くの会社では、工場の出荷場(外部にある完成品倉庫)に多量の在庫を抱えています。工場に在庫がないからと言って安心しないで下さい。そういう場合は大抵、出荷場に多くの在庫があるものなのです。
このように出荷場に多くの在庫を抱えている会社だと、たとえ皆さんが上司に「製造を内製化してリードタイムを減らしましょう」と提言しても、「製品が外注工場に行っている間の2~3日間なんて、目くじらを立てるほどのモノではない」とはねつけられてしまうかもしれません。。
しかし、そこでくじけてはいけません。実は、製造のリードタイムを短縮することによって、出荷場にある在庫を減らすことができるのです。その理由を見ていきましょう。
出荷場は、製造と販売の間にある場所です。製造と販売には、「作る」ことと「売る」ことの違いだけではなく、他にも大きな違いがあります。
製造は、工程のすべてが管理者の手の内にあります。だから、計画通りに作れることが本来の姿です。逆に計画通りに作れないと管理者はクビになります。
一方、「販売」は、管理者や販売担当者の手の内にはありません。お客様次第です。お客様が「欲しい」と思って手に取っても、最終的に「買う」と決断するかどうかは分かりません。それは、お客様自身の心の問題だからです。
例えが良くないかもしれませんが、販売とは魚釣りと同じようなものだと言うことができます。釣りには「入れ食い(針が水に入った瞬間に魚がかかること)」の日もあれば、「坊主(1日中全く釣れないこと)」の日だってあります。商売も同じようなものだと、かつて先輩から教わりました。その先輩は、「商い」という言葉は「飽きない」という意味だと言っていました。つまり、売れない日が続いても飽きないで続けよ、ということなのだそうです。