日立、08年4-12月期決算は3569億円の赤字

♪この木なんの木~♪〔AFPBB News

「この木なんの木 気になる木 名前も知らない木ですか・・・」

 上記の歌詞で始まる、日立製作所グループのテレビCM。ほとんどの日本人が知っているだろう。この中に登場する大樹は、実は1本の木ではなく、複数の木が集まって1本のように見えているのだという。

 「日立の樹」と呼ばれるこの大樹は、米国ハワイ州オアフ島のモアナルア・ガーデンパーク内にある。「モンキーポッド」というマメ科の植物で、その大きさは実に高さ約25メートル、枝を広げた横幅は約40メートル。風格さえ感じさせる驚くべきスケールだ。

 原子力発電からデジタル家電に至るまで、日立は電機に関するあらゆる事業を手掛けてきた。各事業が寄り添う巨大な集合体、いわゆる「総合電機」の最大手である。そうした実態を、「日立の樹」は的確に余すところなくイメージしている。

 「日立の樹」は何があろうとも揺るがず、今後もその圧倒的な存在感で見る者を圧倒し続けるだろう。それと同じように日立という企業も、変わらぬ信念の下で総合電機という枠組みを愚直なまでに守り続けていくのだと思っていた。

 それだけに4月20日の記者会見で、川村隆会長兼社長が行った「脱・総合電機」宣言には驚きを禁じ得なかった。

前代未聞、赤字7000億円計上へ

 「総合電機の路線から軸足を移し、安定的な収益をもたらされる体質にしたい」

 4月1日付で子会社の会長から本社の経営トップに返り咲いた川村会長兼社長は、会見でこう表明した。今後は原子力発電や情報通信、環境など高い成長が期待できる社会インフラ関連に重点を置き、デジタル家電などの不採算事業には撤退を含め大鉈を振るう考えをにじませた。

 「その巨大さゆえに小回りが利かず、バブル期以降の市場の構造的な変化に対応できていない」「収益力が相対的に低く、早急に不採算事業から撤退し、経営資源を稼ぎ頭となり得るいくつかの事業に集中すべきだ」・・・。

 総合電機各社に対し、アナリストなどは長年、このように手厳しく指摘してきた。平たく言えば、今後も日本の産業界を代表する企業として生き残る気があるなら、「即刻、総合電機の看板を下ろせ」と迫っていたわけである。