前々回書いた「武装する中国株式会社」を象徴するような事件が最近続出している。
3月初旬、海南島沖で多数の中国船が米海軍調査船に対する妨害行為を繰り返した。その2週間後、中国の梁光烈国防相は浜田靖一防衛大臣に空母建造の意思を表明する。5月からは、日米欧の強い反対を押し切って、中国が外国企業にIT関連情報の開示を義務付ける予定だ。
それぞれ別個のニュースにも見えるが、これら一連の事件は、「中国株式会社」が必要であれば軍事的、強制的手段を用いてでも、国家意思を実現するという強い決意を示すものと見るべきだ。
今回から数回に分けて、「中国株式会社」の中でも最も秘密のベールに包まれた調査部門(諜報機関)と警備部門(人民解放軍)が「中国共産党生き残り」のために果たす役割を検証していく。
ソースコードの重要性
中国が5月から開示を求めるのは「中国で生産・販売する外国製のIT製品のソースコード」だ。報道では「ソースコードとは、コンピューター言語で書かれたソフトウエアの設計図」とされているが、それがどれだけ大事かは素人には分かりにくい。
筆者自身、「ソースコード」なる語を初めて聞いたのは21年前、外務省で当時のFSX(次期航空自衛隊支援戦闘機)の日米共同開発問題を担当していた1988年の夏である。その際、日米間の最大の懸案の1つがこのソースコードの開示をめぐる攻防であった。
米側は、共同開発のベースであるF16の航空管制電子機器用のソフトは「オブジェクトコード」しか日本側に開示しないと強硬に主張、ついに最後まで「ソースコード」は開示しなかった。理由は簡単、マシン言語で書かれた「オブジェクトコード」だけではソフトの真の構造が分からないからだ。
FSXだけではない。通常の営利企業ならソフトウエアの核心である「ソースコード」を無償で開示することはない。まして最先端のソフトであれば「ソースコード」など門外不出である。だからこそ、自前の技術開発力に乏しい「中国株式会社」にとって、こうした最新先端技術の獲得は死活的に重要なのだ。