南北7500キロメートル、幅750キロメートルにわたるアンデス山脈は、南米大陸の西側の国々、ベネズエラ、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア、アルゼンチン、チリの6カ国にまたがって連なる。6000メートルを超える高峰が20座以上もそびえ立つ、世界最大規模の山脈である。
今ここ!
比較的短期間に海中から隆起して形成されたため、大量の海水がそのまま山の上に残されることとなった。ウユニ塩湖は世界最大の塩湖である。標高3760メートル、20億トンという膨大な塩が湖を埋め尽くしている。
ウユニ塩湖の観光の拠点となっているウユニは、ボリビアの西側にある小さな町である。ポトシからウユニに到着した私はその日、翌日発のウユニの1泊2日のツアーを申し込んだ。
翌朝、紺色のトヨタのランドクルーザーが宿まで迎えに来たので乗り込むと、熟年フランス人夫婦、アルゼンチンの美人女性と小太りなブラジル人男性のカップル。そして、私と日本人青年。この6人が今日、1日、行動を共にするようだ。
車に乗り込み、軽く会釈をして最後部の席に腰をかける。しばらくすると、アルゼンチン人女性と日本人の青年の様子が少し変だ。私はいぶかしく思い、2人を注視すると、どうやら、この2人がカップルで、男やもめは、私と小太りのブラジル人男性のようだ。
塩原の中に立った白亜のホテル
ウユニ塩湖の平原は結晶が亀甲状に隆起しており、その幾何学的文様が地平線の彼方まで続く。
塩原の彼方に、サボテンが多数生えた「魚の島」という島がある。遠方から見ると、蜃気楼の影響で島が宙に浮いて見え、まるで魚のように見えることからその名前がついたらしい。
島の高台まで歩いて登れるのだが、ここは標高3769メートルの高地。薄い空気に心肺機能がまだ馴染んでいない。私は息切れをしていたが、若いアルゼンチン人女性と日本人の青年カップルは元気一杯、山の丘を駆け上がっていた。
日が傾きだし、ランドクルーザーは街へ戻ることになった。私はウユニ塩湖の真ん中に塩の塊のブロックでできたホテル「オテル・プラヤ・ブランカ」に宿泊を申し込んでいたので、道の途中で他のツアー客と別れてチェックインした。
部屋にはリャマの毛皮が床やベッドに敷き詰められている。窓の外は一面が光り輝く白い塩の世界。そして抜けるように青く澄んだ高い空。一風変わった白亜のホテルの佇まいに気分は上々だ。
ホテル内には小さな塩の塊でできたオブジェが並ぶミュージアムや、塩のブロックのテーブルのカフェ、そして売店が併設されている。外国人観光客の多いウユニだが、日本のガイドブックに紹介されているためか、このホテルの宿泊客は日本人が多い。
この日の宿泊客は日本人のみで、若いカップルと新婚夫婦と私の3組のようだ。私は、たった独りで辺境の地に来たつもりだったが、日本人の、しかも幸せな若いカップルに挟まれて、意気揚々から、少々、憂鬱な気分となった。