「インフラ」という隠れた勝機
グーグルの逆襲を支えたのは、同社が10年以上前から準備を進めてきたハードウエアの垂直統合戦略だ。
自社開発のAI半導体「TPU(Tensor Processing Unit)」、とりわけ最新の「Ironwood(アイアンウッド)」チップは、AI運用のコストを劇的に引き下げた。
このインフラ能力の高さは、かつての宿敵をも引き寄せている。
昨年11月には、米メタが米エヌビディア(NVIDIA)への依存脱却を狙い、数十億ドル(数千億円~1兆円)規模のグーグル製チップ採用に向けて協議を開始した。
米AI新興のアンソロピックなどの競合さえもがグーグルのクラウド基盤を採用している。
アップルとの提携においても、オープンAIのChatGPTが補助的な役割にとどまったのに対し、グーグルの技術が「デフォルトの知能層」として選ばれた意味は大きい。
グーグルは「AIモデル」で競いながら「AIインフラ」で潤うという、したたかな「協調と競争(Co-opetition)」の構図を完成させつつある。
反トラスト法訴訟とAI隆盛による「免罪符」
皮肉にも、AI市場での競争激化はグーグルにとって法的な救いにもなった。
2024年夏に下された検索市場における米反トラスト法(独占禁止法)違反の判決に対し、グーグルは「AIチャットボットの台頭により寡占は事実上崩壊した」と主張。
これが司法当局からの一定の理解を得る形となり、ウエブブラウザー「Chrome(クローム)」の売却といった最悪の事業分割シナリオを回避することに成功した。
主力の検索事業においても、AIによる要約を表示する「AIオーバービュー」や会話型検索の「AIモード」が定着。
チャットボットにユーザーを奪われるとの懸念を、自ら検索体験を再定義することで食い止めた形だ。