最近アラビア海に派遣されたインディペンデンス級沿海域戦闘艦「USSサンタバーバラ」から発射された無人攻撃機「LUCAS」(2025年12月16日アラビア海で撮影、米海軍のサイトより)
静かに、しかし確実に高まる戦の気配
中東では、戦争は決して突然始まるわけではない。むしろ、小さな兆候が静かに積み重なり、ある瞬間に臨界点を超える。
いま、その臨界点に最も近い場所が、カタールの首都ドーハ近郊にあるアル・ウデイド空軍基地である。
ロイターを含む複数の国際メディアは、同基地で米軍要員に退避勧告が出されたと報じた。
外交官は「避難ではなく態勢変更」と説明したが、軍事の世界でこの言葉ほど「重い含意」を持つ表現はない。
イランと向き合う前線基地での要員削減は、米軍が軍事行動に踏み切る前に必ず実施するフォース・プロテクション(部隊防護)措置である。
つまり、米軍はすでに「何かが起きる前」の段階に、一歩踏み出したということだ。
現在の状況認識:即応態勢への移行
アル・ウデイド空軍基地での動きは、単なる用心のための措置ではない。その背後には、イラン国内の急速な不安定化がある。
●経済難を背景に抗議デモが拡大
●デモ参加者の処刑報道が国際的非難を呼ぶ
●トランプ大統領が「非常に強力な措置」を示唆
こうした情勢の中、欧州当局者はロイターに対し、「米軍の軍事介入は24時間以内に起こり得る」と述べた。
これは外交辞令ではない。「作戦時計」が確実に動き始めたことを示す言葉である。
さらに、情勢を一段と緊迫させたのが、トランプ大統領とイランのハメネイ師の「24時間以内の応酬」である。
トランプ大統領は1月16日、イランで予定されていた大量処刑の中止を「評価する」と発言し、一時的にトーンを和らげた。
しかし翌17日、イランの最高指導者ハメネイ師は演説で「数千人が死亡した」と認めつつ、米国とイスラエルが扇動したと非難し、「トランプはイラン国民に対する犯罪者だ」と強烈に反撃した。
これを受け、トランプ大統領は再び強硬姿勢に戻り、「イランには新しい指導者が必要だ」と応酬した。
この「発言の揺れ」は偶然ではなく、双方が国内政治と軍事的圧力を同時に操作する中で生じる典型的なエスカレーション・パターンである。
つまり、外交言語のレベルでも「作戦時計」は確実に進んでいる。
作戦の政治的トリガー:引き金は何か
米国が軍事行動に踏み切る条件は、次の4つに整理できる。
●イラン当局によるデモ参加者への大規模弾圧・処刑
●イランが米軍基地(特にアル・ウデイド)への攻撃を示唆
●トランプ大統領の強硬姿勢により、軍事行動に踏み切るための「政治的な敷居」が下がった
●アル・ウデイド空軍基地における米軍要員の撤収=フォース・プロテクションの発動
これらを総合すると、米国はすでに「イランの行動次第で即応できる態勢」に入っていると評価できる。
冒頭写真の無人攻撃機LUCAS部隊を展開するUSSサンタバーバラ(2025年12月16日アラビア海で、米海軍のサイトより)