チュクチ半島で暮らすチュクチ人(写真:photoxpress/AFLO)
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(安木 新一郎:函館大学教授)

 2026年1月、米トランプ政権はベネズエラのマドゥロ大統領を拘束し、ニューヨークへ連れ去った。反米政権を倒し、世界最大の石油埋蔵量を誇るベネズエラを米国のコントロール下に置く計画だ。

 トランプ政権のモンロー主義である「ドンロー」政策、すなわち西半球を米国単独の勢力圏とする構想は、既に2025年から進められてきた。

 パナマ運河を確保するためにコロンビアの左翼政権に圧力をかける。その布石としてベネズエラを落とす。南端アルゼンチンは親米ミレイ政権があるのでいいとして、カナダとグリーンランドを併合して、北端を米国の直接支配下に置く──という構想だ。

 もともとパナマは運河を建設するためにコロンビアから独立させてできた国。中国がコロンビアを介してパナマへの影響力を行使するというのは、米国にとって容認しがたいだろう。

 シベリア極東のチュクチ自治管区(ロシアの行政区分で、日本の都道府県に相当)はベーリング海峡をはさんだアラスカの対岸にある。

 チュクチとアラスカのあいだは、もっとも狭いところでわずか3.7キロしかない。北極海が重要な国際航路になりつつある今、ベーリング海峡がパナマ運河やスエズ運河に匹敵するチョークポイントになる可能性がある。

 チュクチ自治管区はロシア領だが、地理的には180度線を超えたところにあるため、アメリカ目線で言えば、西半球の一部とも言える。

アラスカと目と鼻の先にあるチュクチ半島(画像:Demis and User:Batholith, Public domain, via Wikimedia Commons)

 ロシアは今、米国がシベリアを得ようとしているのではないかと怯えている。ロシアは弱い国で、いつも周辺国から領土的野心を向けられているというのがロシアの自己認識だからだ。

 しかも、ロシアはチュクチの統治に苦慮している。チュクチ人という「最強の先住民」がおり、米国と関係を強めているためだ。