MiG-31戦闘機の特殊な役割

 ウクライナは今回の攻撃の中で、最も破壊したかったのがMiG-31であったと考えられる。

 この戦闘機は、キンジャール空対地弾道ミサイル搭載型と長距離空対空ミサイル「R-33(射程120キロ)/37(射程200キロ)」搭載型があるが、ウクライナが痛めつけられているのがキンジャール搭載型であった。

 現在、キンジャールミサイルを空中発射できるのは、キンジャール搭載型MiG-31×24機と「Tu-22M3M」型爆撃機だけのようだ。

 Tu-22爆撃機は、コラ半島の基地や極東に避難しているために、この機で攻撃するには、移動のために時間がかかりすぎるため、頻繁に実施するのは難しい。

 このことから、ウクライナとしては当面、数に限りがあるMiG-31を破壊することが求められた。今後も、この機がクリミアやウクライナ国境近くに飛来してきたところを破壊する必要があるだろう。

 もしも、MiG-31が搭載するキンジャールミサイルを撃ち漏らした場合は被害が大きい。

 これを防ぐためにはこの機を破壊すれば、キンジャールを使った攻撃回数を減少させることができると考えるのは当然のことである。

MiG-31戦闘機を破壊したかった理由

 破壊したかった理由は、この戦闘機から発射されるミサイルの撃墜率が低いことにある。

 例えば、ウクライナ空軍による日々発表資料から、2025年12月1か月間のロシアのミサイル攻撃とウクライナの撃墜状況を算定すると以下の通りである。

●ロシアの巡航ミサイル攻撃弾数は120発でウクライナによる撃墜が99発(撃墜率83%)

●スカンデル弾道ミサイル攻撃弾数は概ね37発で撃墜が9発(撃墜率25%)

●キンジャールミサイル攻撃弾数は17発で撃墜が4発(撃墜率24%)であった。

図 各種ミサイル攻撃様相(イメージ)

筆者作成
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 ロシアの発射弾数とウクライナの撃墜数は、ロシアが飽和攻撃の様相やウクライナの防空兵器の保有数によって大きく異なるので、比較的長期間、概ね半年という期間で見る必要がある。

 そこで、今年6月から12月までの約7か月の期間の撃墜率を、ミサイルの種類ごとに見てみる。

 各種巡航ミサイルが78%、イスカンデルミサイルが40%、キンジャールミサイルが28%であった。

 ミサイルの種類ごとに撃墜率が大きく異なっており、巡航ミサイル、イスカンデル、キンジャールの順に撃墜率が低くなる。

 それは、飛翔速度が遅い各種巡航ミサイルだと撃墜率が高く、速度が速い弾道ミサイルだと撃墜率が低くなっているということだ。

 飛翔速度が遅い巡航ミサイルがマッハ0.7程度、飛翔速度が速いイスカンデルが約マッハ6、最も速いのがキンジャールで約マッハ10である。マッハ10になると、撃墜率が極端に低くなる。

 イスカンデルとキンジャールは同じ弾道ミサイルで、弾頭重量も同じ500キロである。

 異なるのは、イスカンデルは地上発射で、キンジャールは高速で飛行する戦闘機・爆撃機からの空中発射である。そのため、キンジャールの飛翔速度は最高でマッハ10程度になる。

 ウクライナが弾道ミサイルを撃ち落とすためには、米国製パトリオットミサイルの「PAC-2」では難しく、「PAC-3」だと可能である。

 PAC-3の弾数は米欧からの供給が限られていて、ロシアの弾道ミサイル攻撃を阻止できずに悩まされてきた。このためウクライナは、その他の方法でその回数を減らしたいと考えていたようだ。