「屈辱の歴史」の象徴・台湾

 台湾の対岸の福建省で17年間勤務した習近平は、台湾には特別の思い入れがある。「中華民族の偉大な復興」を実現するためには、台湾を統一することは不可欠の条件である。「一つの中国」が北京の主張であり、それは、日米両国をはじめ国際的にも認められている。台湾独立など論外である。

 ところが、高市首相が、台湾有事に関して、自衛隊の介入の可能性を示唆したために、習近平は怒ったのである。

 2018年6月12日、上海協力機構(SCO)の青島サミットを終えた習近平は、山東省を視察した。午前中に青島海洋科学・技術国家実験室を訪ねた後、青島を列車で発ち、威海(かつては威海衛と呼ばれていた)に到着した。

 ここは李鴻章が率いる北洋艦隊の拠点があったところで、日清戦争で、日本軍の攻撃を受け、1895年2月、北洋艦隊は壊滅した。清は敗北し、下関条約で台湾を日本に割譲した。

 習近平は船で北洋艦隊の母港のあった劉公島に向かい、甲午戦争(日清戦争)博物館展示館で、展示物の説明を受けた。劉公島は、屈辱の歴史の象徴とされ、中国近代史を学ぶ場所になっている。

 習近平は、甲午戦争(日清戦争)博物館展示館で、「警鐘を鳴らし、歴史の教訓を銘記する必要がある。13億余りの中国人は発奮して強くなる必要がある」と述べた。

 この劉公島訪問も、先述した北京の国家博物館での「復興の道」展示会見学と同様に、屈辱の近代史をしっかりと見つめ、「中華民族の偉大な復興」の必要性を国民に認識させる行動であった。