香港の現状から透けて見える「一国二制度」の未来

 武力統一のコストについては、習近平は十分に認識しており、基本的には平和的統一を目指すであろう。先に引用した演説でも「平和的統一、一国二制度」と強調している。

 しかし、1997年にイギリスから返還されて中国に統一された香港では、「一国二制度」の下で高度の自治が認められたはずだが、次第に中国本土化が進められている。とくに、2019年の大規模デモをきっかけに、中国は、2020年には香港国家安全維持法を施行し、民主化勢力を弾圧している。それは、一国二制度ではなく、一国一制度への歩みである。

 2025年12月7日に行われた香港の立法会(議会、定数90)選挙では、親中派が議席を独占した。2021年の選挙法改正で、香港政府に忠誠を誓う「愛国者」以外は立候補できなくなったからである。35人の現職議員が立候補を断念した。投票率も31.9%にとどまった。

今年10月、台湾の双十節の式典で演説する頼清徳総統。台湾独立を主張する頼総統は、防衛力強化を訴えた(写真:共同通信社)

 このような香港の現状を見れば、台湾の人々が、中国が「一国二制度」を維持することはないと結論づけるのは当然である。習近平が喧伝する「平和的統一、一国二制度」の信頼性は高くない。

 そうなると、武力統一という選択肢も排除されないことになる。そのような事態にならないように、日米を中心に国際社会は中国との対話を継続せねばならない。