被害者宅は山奥ではなく田畑の広がる農村地帯

 今回のクマによる被害が起きたのは、真夏のような暑さとはいえ、ちょうどクマたちの繁殖期真っただ中の季節だ。ただ、テレビのニュースで映像を見ると、被害があった自宅の近所は山の中ではないらしく、近くに水田が見える。あらためて地図で確認すると、クマの被害が起きたのは和賀山塊のある場所からずっと東に下った平地であることが分かった。

クマに襲われ女性が亡くなった現場。自宅の周りには規制線が張られ警察官が警戒に当たった=岩手県北上市和賀町(写真:岩手日報/共同通信イメージズ)

 被害を受けた民家の付近には高速道路のインターチェンジもある。山奥の一軒家の居間にクマが入って、そこで高齢女性と出くわして襲われたのだと思っていたが、どうやらそれは違うようだ。

 この地域では、先月6月30日からクマの目撃情報や物的被害が相次いで発生していたという。現場は水田や畑が広がる農村地帯で、車の交通量も少なくない場所だ。

 付近でのクマの被害をまとめると、

・6月30日 クマが小屋に侵入
・7月1日 倉庫に侵入(コメ2袋食害)
・7月2日 小屋に侵入
・7月3日 家屋に侵入(同じ家に2回 コメ食害)
・7月4日 自宅居間で高齢女性が死亡しているのが発見される

 となっている。いずれの被害も同一個体のクマによるものの可能性を指摘する声もある。

 そうだとすれば、何度も人家や小屋に侵入したクマが、今度はたまたま被害女性宅の居間まで入り込み、そこで被害者と出くわしたということなのか。亡くなった女性は普段着姿であったというから、物音に気が付いて居間にいってみたところクマと遭い被害を受けた可能性がある。警察によると玄関の扉は開いており、家の中からクマのものとみられる毛も見つかっているという。どうやらクマは玄関から侵入した可能性が高そうだ。