トランプ政権の戦略文書に3つの解釈

 だが、ヨーロッパ人はこれをどれほど真剣に受け止めるべきなのか。NSSを解釈する方法は大きく分けて3つある。

 1つ目は、大半の国家安全保障戦略は意味のない戯言で、シンクタンクで綿密に研究されるが、現実世界とはほとんど関係がないというものだ。

 アントン自身が今や政権を去ったこと、またトランプが一般的に体系的な思想家と見なされていないことは、文明的な文言は米国極右を喜ばせるための材料として片づけるのを容易にする。

 2つ目の見方は、これはトランプ政権が実際に気にかける問題――具体的にはロシアと和平合意を結ぶことや米国のテック企業を規制する欧州の取り組みを打ち切ること――について足並みをそろえるよう欧州連合(EU)に激しい圧力をかける米国の努力の一環だということだ。

 米国務副長官のクリストファー・ランドーは先週末、米国と同盟関係にある欧州諸国が「文明的な自殺行為」を犯していると批判する内容をソーシャルメディアに投稿した。

 ランドーは、米国はもはや、米国の国益に「完全に反する」政策を取るEU諸国と「パートナーであるふりを続ける」ことはできないと断じた。

 投稿にリストアップされた政策には「検閲」とされるものや「気候への狂信主義」が含まれていた。

 これはほとんど隠されてもいない脅しのように読める。トランプ政権が気に入らないEU政策を撤回しろ、さもなくば米国はNATOへの支援について考え直す、ということだ。

 NSSの言葉遣いとランドーの脅し文句とが重なると、3つ目のさらに過激な解釈も成り立つ。

 トランプ政権が反対しているのは個々のEU政策だけではなく、米国の国益に敵対的な「グローバリスト」のプロジェクトとして描写されるEUそのものの存在だということだ。

 この思考の流れが論理的な結論まで行き着くと、米国がNATOから離れ、欧州諸国の現政府を相手にせず、恒久的にロシアへ接近する未来が見えてくる。

 ウラジーミル・プーチンの報道官はすでに米国のNSSを称賛し、新たな戦略はクレムリンの考えに沿っていると語った。

 プーチンに近いロシア人は、欧州で言論の自由が脅かされているというトランプ政権の主張への支持を表明するためにX(旧ツイッター、ロシアでは禁止されているプラットフォーム)を使った。