生成AIの普及でSNSが自家中毒を起こす可能性も(Thomas UlrichによるPixabayからの画像)
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年11月28日付)
ドナルド・トランプがソーシャルメディアを利用せずに権力の座につくことは想像しがたい。
彼の政治的な才覚は今の時代のメディアの使い方を体得しているところにある。誰よりも上手に人々の不満に火をつけ、支持を取り付け、怒りをあおっている。
大統領1期目のツイートは2万5000件を超えた。1日当たり18件投稿していた計算だ。2期目に入ってもその勢いは衰えず、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で次々に発信している。
このアプローチは「ソーシャルメディアの、ソーシャルメディアによる、ソーシャルメディアのための政府」と言えそうなほどだ。
MAGA系にも詐称アカウント
トランプのMAGA(米国を再び偉大にする)運動もソーシャルメディアを本拠地にしており、何万というアカウントが大統領のメッセージを増幅している。
それだけに、最も活発な「米国第一主義」のアカウントの一部が外国で運用されているとなれば、意外感はいやでも増す。
X(旧ツイッター)は11月21日、「世界的な街の広場の信頼性」を確保するためと称してアカウントの所在地を表示し始めた。
その結果、影響力を持つ数十のMAGA系アカウントがロシアやインド、ナイジェリアといった外国で運用されていることが明らかになった。
例えば「我らが人民の愛国の声」を自称し、39万3000人を超えるフォロワーがいるアカウント「MAGA NATION」は、拠点が東欧(欧州連合=EU=非加盟国)にあることが明かされた。
悪意ある外国の個人・団体は詐称アカウントを使うことが知られている。政治をめぐる議論を操作するか、トラフィックを増やして収益を得ることが目的だ。
これは我々のインフォスフィア(情報空間)の評価を意図的に引き下げる方法の一つに過ぎない。
ソーシャルメディアの歪みにはこのほかに3タイプある。それも合わせ、ヨハネの黙示録ならぬ情報黙示録の四騎士とでも呼ぶといい。
放置しておけば、オンラインで読めるものほぼすべてに対する信頼が間違いなく破壊される。