ジミ・ヘンドリックス27歳、エルビス・プレスリー42歳、ジョン・レノン40歳、フレディ・マーキュリー45歳・・・。
60歳を超えても現役のカリスマたち
早世して「伝説」になった天才がいる一方で、老いても現役であり続けるカリスマたちがいる。今年68歳になるボブ・ディランは、1988年からネヴァー・エンディング・ツアーを行い、昨年(2008年)に新譜『テル・テイル・サインズ』を発表している。
今年60歳のブルース・スプリングスティーンは、2007年の『MAGIC』からわずか1年で24作目のアルバム『ワーキング・オン・ア・ドリーム』を発表。
一昨年に来日したキャロル・キングは、60代後半になっても瑞々しい新曲を作り、ともに今年68歳のデュオ、サイモン&ガーファンクルは、今年、16年振りの来日公演を行う。
創造的な新作を発表しているにもかかわらず、少なくとも日本ではあまり注目されることなく、なにかといえば過去のアルバムばかり引き合いに出されることに対して大きなクエスチョンマークを投げつけたいという気持ちがあった
と著者は、年齢を感じさせず、あるいは60代という年齢だからこそ表現できる境地を示す “年老いたロッカー” に焦点を当てた。
登場するのは、ミック・ジャガー、ジョン・フォガティ、エリック・バードン、ポール・マッカートニー、リー・ヘイズルウッド、ロジャー・マッギン、ディオン、ブライアン・ウイルソン、リンゴ・スター、シルヴィー・ヴァルタン、エルトン・ジョン、アル・ジャーディン、グレアム・ナッシュ、ボブ・ディラン--の14人。
彼らの「今現在」の音楽を、近作に誘う形で紹介している。個人的に印象に残ったのは、ポール・マッカートニーとブライアン・ウイルソンの項である。
ビートルズという巨大な帰る場所をもちながら、かりに立ち止まった時期にあっても、過去をふり返ることよりも常に前進と変化を選択してきた
ポールは、2005年、63歳で傑作アルバム『ケイオス・アンド・クリエイション・イン・ザ・バックヤード』を発表するが、2007年の次作でクオリティを平然と下げる。
“迷い” こそが、現役クリエイターの証なのだと著者は書き、前へ、と線を引き続けるポールは、そして66歳にして、ファイアーマン名義による驚異の新作『エレクトリック・アーギュメンツ』を発表した。