『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS)
3位は『ザ・ロイヤルファミリー』。競馬界のアウトロー的存在の馬主が、調教師や騎手らと一丸となって、日本中央競馬会(JRA)のGⅠレース「有馬記念」の勝利を目指す物語。1つの目標に向かって突き進むチームの尊さ、美しさが浮かび上がってきた。
馬主は山王耕造(佐藤浩市)。人材派遣会社・ロイヤルヒューマン社の創業社長だ。競馬を愛してやまない。だが、息子で人事統括部長の優太郎(小泉孝太郎)は大の競馬嫌い。耕造が担当する競馬事業部を斬り捨てようとしていた。赤字なので無理もなかった。
「金じゃないんだよ!」。耕造はそう吠える。確かにそうなのだろう。現実の競馬界でも儲かっている馬主、ファンは少ないという。それでも競馬は人を惹き付ける。
人生を思わせるようなところがあるからだろう。1987年に地方競馬の笠松競馬場(岐阜)でデビューしたオグリキャップもそうだった。普段は競馬に関心のない人まで熱くさせた。
オグリは良血ではなく、地方出身。典型的な非エリートだったが、翌1988年から中央競馬に移ると、勝ちまくる。生まれたときから将来を期待されたエリート馬を次々と破った。GⅠレースでも4勝した。
だが、晩年になると、競馬評論家たちから「オグリはもう終わった」と蔑まれる。定年前のサラリーマンが厄介者扱いを受けるようだった。そんな中、引退レースとなった1990年の有馬記念は1着。劇的なラストランだった。中山競馬場(千葉)は嵐のような歓声に包まれた。涙を流す観客が何人もいた。
この物語にも感動が待っているはずだ。耕造のチームにもエリートやエリート馬はいない。耕造は偏屈かつ短気なので、競馬界で敬遠されている。馬の見方も分からない。
調教師の広中博(安藤政信)は理論派で優秀だが、迎合を嫌うため、周囲からやや浮いた存在になっている。騎手の佐木隆二郎(高杉真宙)は競馬学校在校中に同級生を殴ってしまい、中退。地方の岩手競馬で騎手をしたあと、中央競馬に戻ってきた。
TBS『ザ・ロイヤルファミリー』で主演を務める妻夫木聡(写真:共同通信社)
佐木を呼び戻したのは主人公の栗須栄治(妻夫木聡)。耕造の競馬事業の秘書だが、もともと税理士で、競馬は門外漢だ。しかし、常識人であり、人の話をよく聞く。耕造が壊してしまう人間関係の修復役も果たす。
耕造のチームが揃った2日放送の第4回から俄然面白くなってきた。最終回の舞台は間違いなく有馬記念だ。