『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS)
4位は『じゃあ、あんたが作ってみろよ』。主人公はお互いに価値観の歪んだカップル。6年交際し、結婚まで秒読みだったが、ついに限界が訪れ、別れる。そこから物語が始まった。ダメな男女を笑う形のラブコメディーである。
物分かりのいい男性役が多かった竹内涼真に、女性を型に嵌めてしまう男性役を演じさせている。これまでは自立した女性役が目立った夏帆に頼りない女性役をやらせている。この意外性が効を奏した。
TBS『じゃあ、あんたが作ってみろよ』で主演を務める竹内涼真。9月21日、中山競馬場で最終レース後のスペシャルトークショーに登場した(写真:産経新聞社)
海老原勝男(竹内)と山岸鮎美(夏帆)は大学の同級生だ。学生時代から付き合い始めた。卒業後、勝男は一流メーカーに入り、鮎美は商社の受付担当者になる。その後、長く同棲。勝男は結婚まで秒読みだと勝手に思っていた。
ある日、勝男はプロポーズの日時を一方的に決め、自分の選んだレストランに鮎美を呼び出す。そして指輪を見せながら、「結婚しよ」と言った。NOの答えは全く想定していなかった。ところが鮎美の返事は「無理です」。おまけに「別れたい」と告げられた。勝男は顔面蒼白となる。
無理もなかった。勝男の価値観は昭和期でしか通用しそうにないもの。「料理は女がつくって当たり前」と固く信じていた上、味はもちろん、見た目にまで細かく口を出した。
味噌汁の具がナスだった際には「季節外れだね」と余計なことを言った。外出する鮎美が食事の用意をしておくと、感謝するどころか、不満をにじませた。「作りたてがいいんだよね」。鮎美も働いていることなど忘れていた。料理に限らず、家事は一切やらない。これでは鮎美が奴隷だ。
『じゃあ、あんたが作ってみろよ』に出演中の夏帆(写真:産経新聞社)
もっとも、鮎美が一方的に被害者だったかというと、そうとも言い切れない。鮎美の目標は勝男との結婚だったが、それは勝男が一流企業に勤め、ルックスも良いから。勝男の内面が好きになったわけではなかった。
鮎美にとって人生のゴールはハイスペックな男性と結婚すること。だから自分を徹底的に偽り、勝男の好みに合わせてきた。鮎美には自分というものがなかった。
勝男と別れた鮎美はすぐに酒店を経営するミナト(青木柚)と同棲する。今度は打算なしだったが、異性を見る目が養われていない。ミナトは軽い男。1つのバーに来る女性たちと何人も付き合っていた。
勝男と鮎美の価値観はともに古い。だが、ひょっとすると今も似た考えの人がいるかも知れない。完全なフィクションとは言い切れない。だから人気なのだろう。