中国空母「6隻配備計画」は日米の安全保障に多大な影響を与える

 中国は2035年までに空母を6隻運用することを目指しており、4隻目以降の空母は米海軍の空母と同様の原子力推進になる可能性がある。

 前述した「海軍建設の方針」によると、2040年までに米海軍によるインド太平洋の独占的支配を阻止するとしているが、これまでの急速な中国海軍の近代化ぶりを考慮すると決して非現実的な目標ではない。

 一方、米海軍はニミッツ級空母10隻とジェラルド・R・フォード級空母1隻の合計11隻の空母を保有し、世界の海に展開している。中国が6隻体制になれば、少なくとも太平洋に1隻、インド洋に1隻を常時展開することが可能になる。

 オースティン米国防長官は2024年5月3日、ハワイで行われた米インド太平洋軍司令官交代式で「中国にはインド太平洋を支配する意志があり、その能力をますます高めている。迫りくる挑戦だ」と述べ、中国軍の近代化に強い警戒感を示した。

 もし、中国海軍が6隻の空母をインド太平洋に展開したとき、米国の安全保障も、そして日本の安全保障も戦略の修正を余儀なくされるだろう。

 日本周辺の中国艦船の動向といえば、ともすれば尖閣諸島の領海に侵入する海警局(沿岸警備隊)や海洋調査船のニュースにばかり目が行きがちだが、本稿で述べたような日本を包囲する中国軍の動向についても注意を払う必要がある。

中国空母「遼寧」(写真:防衛省・統合幕僚監部の報道資料より)
中国海軍3隻目の空母「福建」。米国の最新鋭空母にしか装備されていない電磁カタパルトを搭載している(写真:防衛省・統合幕僚監部の報道資料より)
中国空母「遼寧」と「山東」の動向(2025年5月~6月)。両空母にはイージス艦を含む巡洋艦、ミサイル駆逐艦などが随伴していると思われる(図:防衛省・統合幕僚監部の報道資料より)