鄧小平時代から引き継がれる「海軍建設の方針」

 中国は国家戦略を実現するために、海軍力の建設を計画的に推し進めている。以下に記すのは、鄧小平中央軍事委員会主席の意向に沿って1982年に劉華清副主席が策定した「海軍建設の方針」である。

・再建期(1982~2000年):中国沿岸海域の完全な防備態勢を整備
・躍進前期(2000~2010年):第一列島線内部の制海権確保
・躍進後期(2010~2020年):第二列島線内部の制海権確保。空母建造
・完成期(2020~2040年):米海軍による太平洋、インド洋の独占的支配を阻止
・2040年:米海軍と対等な海軍建設

 この計画は時代の変化を受けて度々見直されてきたが、基本的な枠組みは今なお引き継がれている。現在は完成期に該当するが、前述した空母2隻の太平洋への展開は国家戦略を具現化する動きの一環といえる。

 現在、中国の戦略の柱となっているのは、「接近阻止」「領域拒否」(Anti-Access/Area Denial, A2/AD)というものである。

 A2/ADとは、南西諸島とフィリピンを結ぶ「第1列島線」の内側に米軍を進入させず、東側に離れた「第2列島線」の内側で米軍の作戦行動を阻止する戦略のことを指す。

「第1列島線」を東に抜けて西太平洋に出る空軍の遠洋訓練は2015年3月から確認されている。中国空軍の申進科報道官(当時)によると、2016年9月25日に空軍機が40機以上、西太平洋で訓練を実施し、一部の航空機が宮古海峡を通過したという。

 飛行目的について同報道官は、「空軍の遠海実戦能力をテストした」としたうえで、東シナ海上空の防空識別圏(ADIZ)で爆撃機と戦闘機による「定期的な哨戒飛行も実施した」と述べている。

図:共同通信社