韓国の李在明大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

国民の嘲笑の対象となった李在明氏の経済理論

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 李在明(イ・ジェミョン)大統領の長年の経済哲学である「ホテル経済学」が韓国で再び注目を集めている。

 李大統領は2017年の城南市長時期から、代表的な公約である地域貨幣とベーシックインカム等の現金福祉政策の効果を説明するため、ホテル予約から始まるおカネの循環が町の経済を活性化させるというたとえ話を繰り返し披露してきた。

 同時に、このたとえ話は、多くの経済専門家から「論理的矛盾」を指摘されるなど、絶えず論戦を巻き起こしてきた議論の多い主張だ。

 ところが、最近、韓国屈指の高級ホテルを舞台に「現実版・ホテル経済学」というべき事態が発生したことで、再び脚光を浴びているのだ。

 2017年、城南市長だった李在明氏が自分のSNSに次のような内容を投稿した。

「人気の少ないある村にホテル、家具店、チキン屋、文房具屋がある。ある観光客が10万ウォンを払ってホテルの部屋を予約した。すると、ホテルのオーナーは家具店に10万ウォンを払って新しいベッドを購入した。すると家具店の店主は、チキン屋に10万ウォン分のチキンを注文した。現金が入ったチキン屋の社長は文房具店で10万ウォン分の文具を購入した。文房具店の主人はそのおカネでホテルから借りていた10万ウォンを返した。その時、観光客がホテル予約を取り消し、10万ウォンを払い戻していった。

 結果的に村に入ってきたおカネはありません。しかし、おカネが村を一周し、村の商店街にも活気が出ます。これがまさに(ベーシックインカムがもたらす)経済活性化です」

 このたとえ話は、米国とドイツなどのリベラル系の経済学者たちが「流動性供給を通じた債務関係清算」という次元で作り出したものがベースとなっており、もともとは村の商店街は全てお互いに債権債務関係を持っており、観光客のホテル予約金10万ウォンはお互いの債務を返すのに使われるというストーリーだった。それは、例えば1997年の韓国の金融危機の時に、IMFから借款を受け、流動性危機から脱したような「金融救済の効果」を説明するときに用いられたものだった。

 ところが、李在明市長は債務を返済する行為を売上が発生する取引行為に変え、ケインズの乗数効果まで話を拡大させ、自身の経済政策を補強する材料にしたのだ。

 当然、経済学の専門家たちから理論的誤りに対する批判が噴出した。限界消費性向のために最初に投入された10万ウォンと同じ額が次の消費に回ることは現実的でなく、循環するおカネは早晩枯渇することになる――というのが経済専門家たちの解説だ。ネットユーザーの間からも「文具店に貸していた10万ウォン分の債権が消失するホテルが損害を被っているではないか」という指摘がなされた。