半導体受託製造(ファウンドリー)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は9月初旬、自社の中国・南京工場向け米国製製造装置に適用されてきた輸出優遇措置が、撤回されると明らかにした。
米政府からの通知に基づくもので、今年末の失効後は装置ごとに個別の輸出許可が必要になる。
この動きは米商務省が8月末、中国で半導体工場を操業する外資系(米国以外の)企業を対象に決定した措置の一環だ。(米商務省の発表資料)。
韓国のサムスン電子やSKハイニックスも同様の通告を受けている。
米国は中国の技術高度化を阻止する狙いだ。ただ、結果として中国が独自の技術開発を加速させるという、意図しない事態を招く可能性も指摘されている。
輸出管理の「抜け穴」を閉鎖
今回の措置は、「検証済み最終使用者(Validated End-User、VEU)」と呼ばれるステータスを撤廃するものだ。
この資格によって、TSMCなど主要半導体メーカーはこれまで、煩雑な手続きを要することなく、米国製装置を迅速に中国へ輸入することができた。
これは、米国で製造された装置のみならず、米国の技術や知的財産を用いて作られた製品・技術を対象とする幅広いものだ。
しかし今後各社は、中国国内の自社工場にこれらを搬入する際、一件ごとに米商務省の審査を受けることになる。
米政府の狙いは明確だ。
商務省産業安全保障局(BIS)は、一部の外国企業にのみ与えられていたこの優遇策を「米企業を競争上不利な立場に置く抜け穴」と結論づけた。
BISのジェフリー・ケスラー商務次官補は「抜け穴を塞ぐことは、我々の公約を果たすための重要な一歩だ」と強調した。
BISは今後も既存工場の操業維持に必要な許可を与えるものの、中国国内での生産能力拡大や技術の高度化につながる投資は認めない方針を示している。
