「別の会合をお膳立てするための会合なら、我々の信用は失墜し、危機は深まるだろう」――。ロンドンで4月2日開催された第2回G20金融サミットの直前、ブラジルのルラ大統領はこうした懸念を抱いていた。それは杞憂だったのか、あるいは心配した通りの展開となったのか。

 兎にも角にも、G20共同声明は「積算根拠が分からない」(政府筋)という数字をかき集め、世界経済の「回復と改革」を演出してみせた。「100年に1度」の経済危機から脱するため、景気刺激策や金融監督、IMF(国際通貨基金)改革をめぐっては、確かに昨年11月のワシントン初会合から「漸進」したと言ってよいだろう。

 しかし、これは会合前から容易に予想できただけに、具体的成果は「やはり第3回会合の開催決定だけ」という印象が強い。世界経済の回復が、米国の金融システム修復をはじめ個別の政策対応に委ねられている現状では、今回のサミットの役割は初めから限定的だったのかもしれない。

20年前の「悲劇」、一変したスタジアム

金融サミットに反対、欧州各都市で大規模デモ

G20抗議デモで1人死亡

大規模デモ、銀行が標的
AFPBB News

 金融サミット開催前日、ロンドン・シティ周辺では数千人規模のデモが行われ、会合当日にも小規模なデモがあった。しかし、あくまで限られた場所での出来事。一般の英国民にとっては、G20サミットは縁遠い存在だ。閉幕後の週末も、ロンドン市内は観光客で大にぎわい。麻生太郎首相が宿泊したホテル近くの公園では、朝からランナーや子ども連れが芝生の上でのどかな時間を過ごし、夕方からのフットボール(サッカー)観戦に備えていた。

 英国のプロサッカー「プレミアリーグ」では、毎年8月~翌年5月まで20のクラブが各38試合を戦う。4月は優勝争いが大詰めを迎え、試合は一段と白熱する。一方、同時並行で進む各国リーグの上位クラブによるUEFA(欧州サッカー連盟)チャンピオンズリーグ(CL)も5月下旬の決勝戦に向け、この時期が正念場。強豪クラブは週央CL、週末国内リーグ戦と、超過密日程を余儀なくされている。

金融サミット?土曜はサッカー観戦!

 ロンドン市内を走る地下鉄は、日曜日の「運休」が当たり前。商店も半ドンが普通だから、それに比べると、サッカー選手はよく働く。もっとも、首位争いを演じているマンチェスター・ユナイテッド(マンU)とリバプールのメンバーを見ると、例えば3月14日の試合では先発出場のうちイングランド出身者はわずか5人(両チーム合計)。控えを含めると、両チーム選手の国籍(地域含む)は計19カ国に上り、週末まで働き者の大半はやはり外国人なのだ。

古きよき時代・・・フラム本拠地

 4月4日土曜日、ロンドン近郊のクレイブン・コテージに出掛けた。ここを本拠地とするフラム(フルハム)VSリバプールの試合が、午後5時半から始まるのだ。

 フラムは、英デパート「ハロッズ」のエジプト人オーナーが所有するクラブ。ただ、スタジアムはおしゃれとは無縁で、ビールのジョッキが似合いそうな古き良き時代のムードが漂う。テムズ河畔に立つスタジアムの規模は、2万5000人にすぎない。