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(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年9月3日付)

Julius SilverによるPixabayからの画像

 フランスでは予算案をめぐって議会が紛糾しているため、政権が絶体絶命の危機に瀕している。

 米国ではドナルド・トランプ大統領の関税収入が入っても財政改善の兆しがほとんど見えず、年間の財政赤字は当面、国内総生産(GDP)比で6%という持続不可能な値に近いまま推移しそうだ。

 イタリアと日本では今年、GDP比の一般政府純債務残高がそれぞれ127%、134%に達している。

財政は良好なのにIMF融資までささやかれる不思議

 財政が苦境に陥っているこれらの国々に比べれば、英国の国家財政は客観的に見て良好だ。

 GDP比の純債務はまだ100%を下回っている。他の主要7カ国(G7)諸国とは異なり、今年度の財政赤字はGDP比で1%前後縮小する軌道に乗っており、借り入れは米国の水準の3分の2にすぎない。

 それにもかかわらず、英国の政界と金融市場は財政の悪化懸念で頭がいっぱいだ。

 政府の長期借り入れコストは1998年以降で最も高い水準に達しており、中長期の借り入れにおいてはG7諸国で最も高い金利を支払っている。

 政治、制度、経済の特殊な機能不全が起きていなければ、こんな状況にはならない。

 世間では、経済の低成長から金利の上昇、債務をめぐる状況の悪化を経て増税へと至る破滅的な連鎖が取り沙汰されているが、英国の今年の経済成長率が予想を上回って推移している以上、英国の問題に対するこの診断はお粗末だ。

 もっとばかげているのは、英国債の発行に大きなストレスがかかっているわけでもないのに、英国が1976年のように国際通貨基金(IMF)の支援を近々必要とするかもしれないと騒がれていることだ。