天皇陛下に筑波大入学を報告するため、皇居に入られる秋篠宮家の長男悠仁さま(2025年4月6日、写真:共同通信社)
(つげ のり子:放送作家、皇室ライター)
皇族が「直系」から「傍系」に移る歴史的転換点
秋篠宮家の長男で筑波大学1年生の悠仁さまが、9月6日に成年式を迎えられる。
これは、実に40年ぶりの「成年皇位継承者」の誕生でもある。近年は敬宮愛子さまへの女性天皇待望論が注目を集め、世論の支持も高まっているが、皇室典範の改正なしには「女性天皇の即位」は実現不可能であり、現行制度の下では、秋篠宮さまを経て悠仁さまが天皇となられる道筋がまずは確定的と言っても間違いない。
この事実については、ほとんどの国民にとって既知のことであり、将来、悠仁さまの皇位継承には何の問題もない。
しかし、今回、悠仁さまが成年となったことは、実は約250年ぶりに皇統が「直系」から「傍系」へと移る大きな歴史的転換点をも意味するのだ。
今上天皇の皇統は、245年前の1780年、第119代光格天皇の即位によって始まった。
光格天皇の前の帝である後桃園天皇は、22歳という若さで崩御されたのだが、当時、皇室には直系の男子皇族が存在せず、皇統は重大な危機に直面してしまった。
このとき選ばれたのが、世襲親王家(世継ぎの権利を持つ宮家)である閑院宮家の第六王子、まだ8歳の子供であった師仁(もろひと)親王である。この親王こそが、現在の天皇家の祖となる後の光格天皇だ。
閑院宮家は東山天皇を祖とし、その崩御から約70年の歳月を経て、すでに直系の皇統とはかなり距離があったが、幕府は政治不安を避けるため「血筋の正統性」と「従順さ」を重視し、公家社会も利害を調整して合意に至った。結果として、皇統の連続はかろうじて保たれたのである。
以来、現在の天皇家は光格天皇、仁孝天皇、孝明天皇、明治天皇、大正天皇、昭和天皇、上皇陛下、今上天皇へと、直系8代の天皇によって連綿と受け継がれてきた。
しかし、この直系の系譜が、将来、今上天皇の弟である秋篠宮家に移り、その後、長男の悠仁さまへと継承されていくのである。
もちろん、兄から弟へ皇位が継承されるのは、歴史的にも頻繁に行われてきており、皇統につながる血筋の男子であれば、皇室典範上はまったく問題ない。ただし今のところはである。
成年に当たり、初めて記者会見された悠仁さま(2025年3月3日、写真:代表撮影/共同通信社)