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(英エコノミスト誌 2025年8月30日号)

抗日戦争勝利80周年軍事パレードの予行演習を行う人民解放軍(8月20日、写真:AP/アフロ)

軍事パレードは最高幹部の更迭の後に開かれる。

 今年6月、米国のドナルド・トランプ大統領が行った軍事パレードの様子を見た中国の人々は仰天した。

 しまりのない行進に企業の後援、少ない観客。世界最大の軍事大国が一体なぜ、こんな安っぽいもの見せられるのか。

 中国の軍事パレードは、きめ細かい演出が施された豪華絢爛なショーであり、見る者に畏怖と尊敬の念を抱かせるよう設計されている。

 9月3日に行われる6年ぶりのパレードもそうなると思っていい。

 だが、中国の行進もトランプ氏のそれと同様に、指導部の不安定さを反映することになるだろう。

 見た目は印象的であっても、最高司令部の乱れを覆い隠すイベントになるということだ。

6年ぶり軍事パレードに込められたメッセージ

 2019年に行われた前回のパレード以降、約200万人強の兵力を擁する世界最大の軍隊は戦力をさらに大幅に増強させてきた。

 極超音速ミサイルやステルス戦闘機といった新兵器を導入し、核兵器の保有量も大幅に増やした。核弾頭の数は実に2倍に増えている。

 それと同時に、米国との戦略的な競争も熾烈になっている。

 習近平国家主席はこの行事を機に、もし2大国間で戦争が勃発したら大きな危険に直面しうることを米国に知らしめようとする。また台湾に対しては、服従した方が賢明だというメッセージを送るだろう。

 米国政府当局者の間では、人民解放軍という名で知られる中国軍に習氏は重要な課題を与えており、その期日が16カ月後にやって来ると考えられている。

 2027年までに、自分が命令したら台湾を奪いに行けるよう準備しておけ、という課題だ。

 北京で軍事パレードが行われるのは、習氏が2012年に権力を握ってから今回で3度目だ。公式的には、第2次世界大戦終結80周年の記念行事とされている。

 つまり、中国の大部分を占領していた日本が連合国軍に降伏した1945年から80年経ったということだ。

 この降伏をもって、約2000万の中国人が命を落とし、共産党が4年後に国民党軍に勝利する土台にもなった14年間の占領が終わりを迎えた。

 習氏はこうした戦勝パレードを、日本を倒すにあたって共産党が果たした役割を強調して共産党支配を正当化する方法の一つに位置づけている(ただし日本と戦ったのはほとんど国民党軍だった)。

 また習氏はこれと同時に、中国が最先端の「国産」兵器を手に「国家再生」に向かっていることを示したがっている。

(今年5月にインドとパキスタンの間で短期間の紛争が生じた時には、パキスタンが配備した中国製の近代的な戦闘機とミサイルが初めて実戦で使用され、高い性能を示した)