スウェーデンの労働倫理に挑戦する「ソフトガール」たち

「ソフトガール現象」を体現する若者たち(特に女性たち)は、働くことに対する絶対的な価値観に疑問を呈している。彼女らは、たとえ収入が減少しても、ストレスの少ない仕事を選び、余暇やセルフケアに時間を投資することを厭わない。

「ソフトガール現象」について紹介したBBCの記事「Sweden’s ‘soft girl’ trend that celebrates women quitting work」で紹介されているヴィルマ・ラーションさん(25)は、以前は食料品店や介護施設などで働いていたが、1年前に仕事を辞めて専業彼女(未婚なので主婦ではない)になった。

 ヴィルマさんは子供を産むために仕事を辞めたのではなく、「ソフトガールライフを送るために仕事を辞めた」という。そして今が最も幸せだと語っている。「私の人生はより穏やかになり、ストレスも感じていません」(ヴィルマさん)。

 彼女のボーイフレンドは金融関係の仕事でリモートワークをしており、彼がパソコンに向かって働いている間、彼女はジムに行ったり、コーヒーを飲んだり、料理をしたりしている。

 彼女はSNSに投稿する際、スウェーデン語で「専業彼女」「専業主婦」を意味する「#hemflickvan」と「#hemfru」というハッシュタグを使い、自分のライフスタイルをInstagramやYouTube、TikTokで共有している。

 すでに1万6000人のフォロワーを獲得しており、投稿の中には数十万件の「いいね」がついているものもある。

ヴィルマさんのTikTokの様子。優雅な暮らしぶりが投稿されている。

 ほかにも、高給取りの職を辞してヨガインストラクターやフリーランスのクリエイターとして少ない労働時間で働く女性や、キャリアアップの機会を見送り、パートタイム勤務に切り替える女性もいる。

 彼女らにとって、仕事は生活の糧ではあるが、決して生活のすべてではない。心の充足と幸福感が、経済的な成功よりも上位に置かれるのだ。