8月5日、群馬県伊勢崎市は最高気温が41.8度になり、国内最高記録を更新した(写真:共同通信社)
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 いまから12年前の8月、私は「日本最後の清流」とも言われる四万十川を河口から約40キロメートル上った河岸の地区にいた。

 そこで体験したのは、当時の日本の最高気温が更新される瞬間だった。

最高気温更新の瞬間、取材陣から「おめでとうございます」の声

 その年は、例年になく7月から暑い日が続き、このままの暑さだと8月にはどうなってしまうのか、という素朴な疑問から雑誌の企画で取材に出ていた。あらかじめ目星をつけつつ、この日という前日くらいから現地に入った。

 そして、その瞬間はやってきた。

 2013年8月12日、高知県四万十市江川崎で41.0度を記録した。その時を観測所のすぐ隣で迎えた。ただ、観測所といっても、四万十川に架かる橋を渡って山道を少し登ったところにある中学校の駐車場の片隅の道路脇に、フェンスに囲まれて観測機器が設置されていた。アスファルトからは熱気が上る。扉を全開にした体育館では女子生徒がバスケットボールの練習をしていた。よくバテないものだと思っていた。

 そこに立つと、空間に漂う熱波が上からも下からも全身にまとわりついて、離れなかった。自然と息も荒くなり、体温より熱い空気は、鼻孔や口腔から肺の中に入って、身体の芯からほてっていく。吹き出す汗はシャツに沁みて肌にまとわりつき、余計に不快になった。

 これが日本の最高気温だと自覚したつもりだった。他に体験した人物はいるはずもない。