Kohji AsakawaによるPixabayからの画像
前編では、米OpenAIが先日公開した最先端の生成AI「GPT-5」にも、死角があるという現実を描きました。
文字数を正確に数えることもできず、書籍や映画といった文化資産も学習していません。
AIは万能に見えても、死角だらけの存在なのです。
それでも私は、GPT-5が登場した瞬間に「人間が地球で最も賢い存在ではなくなった」と確信しました。
なぜなら、AIの死角を差し引いても、人間が持つ根源的な限界を超えてしまったからです。
後編では、その理由を人間の脳の特性とAIの強みの対比を通じて説明していきます。
第1章 人間は頭をフルに使っていない
人間は、自分の知能を最大限に使っていると信じがちです。しかし、実際には日常の大半はルーチンワークと慣習で動いています。
「思考しているつもり」であっても、過去の経験則をなぞるだけで、新しい知の領域を切り開いているわけではありません。
難しい試験に合格する力を持つ優等生でさえ、社会を根本的に変える思考を日常的にしているわけではないのです。
人間は潜在的に膨大な能力を持っているはずですが、その大部分を眠らせたまま生活しています。
脳はエネルギーの消費が大きいので、臓器の中で一番さぼると言われているのです。
一方、AIは違います。
与えられた課題に対して常に全力で処理を行い、休むことも怠けることもありません。
人間が部分的にしか活用していない脳を、AIはフル稼働させているのです。この差が、AIが人間を超えたといえる最初の理由になります。