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 長期にわたって続いてきた超低金利政策が転換局面に入り、銀行ビジネスは大きな節目を迎えている。異業種から銀行業への新規参入が相次ぐ中で、銀行各社はどのようにして生き残りを図っていくのか──。2025年9月に著書『銀行ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)を出版した、金融エディターの菊地敏明氏に、銀行を取り巻く業界動向や変化するビジネスモデルについて聞いた。

銀行の従来のイメージを覆す「新たなビジネスモデル」

──著書『銀行ビジネス』では、急速に変化を続ける銀行各社の動向やビジネスモデルについて解説しています。なぜ、こうしたテーマを選んだのでしょうか。

菊地敏明氏(以下敬称略) 私は編集者として、銀行で働く方々の取材を長らく続けてきました。かつて学生時代は「銀行はあまり面白くなさそう」というイメージも持っていたものの、金融情報誌『Ma-Do』の編集を15年以上経験する中で感じてきたことは「意外と面白い人たちが多い」という事実でした。

 銀行は変化が乏しく保守的だと思われがちですが、ここ十数年で状況は大きく変わってきています。従来のイメージを覆すような新しいビジネスモデルが次々と生まれており、長年の取材経験を通じて見えてきた銀行業界の変容を、銀行にあまり詳しくない人にも分かりやすく、体系的にまとめられたら意義があるのではないか、と漠然と考えていました。

 そんなときに、たまたま出版社の方からお声がけいただいたことが本書の誕生のきっかけです。

 もっとも、私自身は銀行員だったわけではありません。正直なところ執筆には躊躇もありましたが、銀行を外側から見ていた人間だからこそ書けることもあるのではないか、と思い直したのです。

──この十数年で銀行業界が大きく変化した背景には、何があるのでしょうか。

菊地 背景にはさまざまな要因がありますが、最も大きいのは、長期にわたるゼロ金利・マイナス金利政策によって、従来の収益モデルが成り立ちにくくなったことでしょう。

 銀行はこれまで、「預金を集めて貸し出す」という伝統的なモデルの中で、利ざやによって収益を上げてきました。しかし、このモデルでは十分な利益を確保できない時代が続き、収益構造を抜本的に見直す必要に迫られてきました。

 加えて、政府が掲げてきた「貯蓄から投資へ」という方針や、金融庁が求める「顧客本位の業務運営」も、業界にとって大きな転機となりました。規制緩和の進展により、銀行に求められる役割はこれまで以上に多様化し、単なる金融インフラではなく、顧客の人生や企業経営に寄り添う存在としての姿勢が問われるようになったといえるかもしれません。