日本にも核シェルターは広がるか。写真はスイスの核シェルター(写真:ロイター/アフロ)
目次

「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」という非核三原則を政策理念として掲げる石破茂首相が、核シェルターの必要性を訴え続けています。8月9日に被爆地・長崎を訪れた際も、日本の周辺国が核ミサイルを保有している現状に言及。国民の生命・財産を守るためにはシェルターの整備も必要だとの認識を示しました。戦火の止まない中東など、世界では実際にシェルター設置を進めている国も少なくありません。シェルターの現状はどうなっているのでしょうか。日本に導入するメリットはあるのでしょうか。やさしく解説します。

フロントラインプレス

シェルター整備に動く石破首相

 防衛省によると、抑止とは一般に「相手が攻撃してきた場合、軍事的な対応を行って損害を与える姿勢を示すことで、相手の攻撃そのものを思いとどまらせる」ものとされています。抑止が機能するためには、抑止する側に、軍事的対応を実行する意思と能力があり、かつ、それが相手に正しく認識されることが必要です。

 こうした抑止の考え方は「懲罰的・報復的抑止」と「拒否的抑止」に分類されます。懲罰的・報復的抑止とは、仮に相手国が攻撃を仕掛けた場合、同等かそれ以上の耐えがたい報復を受けることをあらかじめ知らしめることで、相手国に攻撃させない戦略を指します。その場合、自国は相手国に劣らぬ軍事力を整備する必要があります。

 一方、拒否的抑止とは、相手国の攻撃行動を物理的に阻止する能力を整備し、攻撃しても目的は達成できないと知らしめることで成り立つ概念です。通常兵器やミサイル防衛システムなどの整備に加え、シェルターの整備も方策の1つとされています。

 石破首相は常々、後者の「拒否的抑止」能力の整備が必要だと訴えてきました。8月9日、長崎で被爆体験者と面談した際もこれに言及。日本は非核三原則を堅持し、懲罰的抑止力は保有しないとする一方、拒否的抑止力の整備を図ることは政府の責務であるとし、「シェルターの整備もそう。ミサイル防衛システムもそう。(日本への核攻撃を)やっても意味がないことを相手にわからせる」必要があると強調しました。「何があっても国民は傷つかないという態勢」こそが相手の攻撃を抑制するのだと語ったのです。

 では、相手国の武力攻撃に備えるシェルターの整備状況は、どうなっているのでしょうか。