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トランプ新政権による「ディール型外交」、激化する関税戦争、泥沼化するウクライナ・中東情勢――世界は今、誰も予測できない分断と混乱の渦中にある。日本はどう生き残るべきなのか。マッキンゼー元日本支社長で経営コンサルタントの大前研一氏が著した『日本の論点2026-27』(大前研一著/プレジデント社)から一部を抜粋・再編集。米中が覇権を懸けて競うAI開発競争、そして30年以上停滞し続ける日本のGDP。この2つの論点から、日本が進むべき針路を問う。
一世代前のチップを使い、わずか数カ月で「オープンAI」に追いついた中国のAIベンチャー「ディープシーク」。なぜ、制約だらけの環境から世界最先端に並ぶ技術が生まれたのか。
中国のベンチャー企業に世界のAI開発者が驚愕
『日本の論点2026-27』(プレジデント社)
中国発の生成AI「DeepSeek(ディープシーク)」の衝撃が凄まじい。米中のAI開発競争が激化することは必至で、日本はすっかり取り残されてしまった。
2025年1月20日、中国のAIベンチャーであるディープシーク(杭州深度求索人工知能基礎技術研究有限公司)が「DeepSeek-R1」の正式版をリリースした。同社のルーツは創業者の梁文鋒(りょうぶんほう)氏が立ち上げたヘッジファンド「ハイフライヤー」である。ハイフライヤーはAIを利用して投資をするファンドであり、ファンド運用のためのAI技術開発部門が、のちにディープシークになった。
世界のAI開発者を驚かせたのは、「DeepSeek-R1」の開発コストだ。AIモデルの開発には、通常、最先端のCPU(中央演算処理装置)とGPU(画像処理装置)を大量に用意してAIのトレーニングを行う。実際、アメリカ企業はエヌビディアの高性能チップ「H100」を10万基単位で購入して開発環境を整えている。
それに対して、ディープシークが使用していたのは、もっと安価なチップだ。アメリカは安全保障上の理由から中国に対して輸出規制を行っている。梁氏は規制前に、一世代前のモデルである「A100」を個人で1万基用意した。さらに輸出規制が強化される前に、ディープシークは「H800」を2048基購入した。「H800」はエヌビディアが対中輸出規制を受けて中国向けに開発したチップであるが、性能は「H100」に劣り、価格も安い。






