参政党の躍進の背景に「中間層の衰退?」(写真:ロイター/アフロ)
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(河田 皓史:みずほリサーチ&テクノロジーズ チーフグローバルエコノミスト)

 7月の参院選は与党が過半数割れとなり、衆院に続いて参院も少数与党化の結果となった。その中で議席数を大きく伸ばしたのは国民民主党と参政党である。両党の勢力拡大については様々な要因が指摘されているが、その1つは「中間層の不満」をうまく吸い上げたことだと思われる。

 日本はかつて「一億総中流」と言われるような低格差社会であったとされる。高度成長期が終了した後も先進国の中では高めの経済成長率が維持される中、多くの国民が経済成長に伴う豊かさを実感できていた。そうした中で形成された「分厚い中間層」が、「頑張って働けば、国が豊かになって、自分も豊かになる」という世界観を信じ続けられたことが、政権の安定性につながっていた面がある。

 一方、昨今は「中間層の衰退」といった話をよく耳にする。日本経済に関する政策論議の中で、党派を問わず「中間層の復活」といったスローガンが掲げられることが多いのも、その証左と言えるかもしれない。

 では、中間層は実際にどの程度衰退しているのだろうか。実は「中間層」という言葉に普遍的な定義はないため、その時々で何らかの定義をする必要がある。

 学術研究においては所得分布の中央値に近い所得の人を中間層とみなすことが多い。だが、中央値そのものが変化すると解釈が難しくなるといった課題もある。そのため、本稿ではシンプルに「一定以上・一定以下の豊かさを持つ人」を中間層とみなすことにする。

 豊かさの計測方法としては様々なものがあり得るが、大きく言えば2種類である。1つは賃金や所得といった「客観的なデータ」で、もう1つは自らの豊かさに関する「主観的な認識」である。

 最初に「客観的なデータ」を確認してみよう。