2025年7月29日、高校総体、男子110mハードル、タイムレース決勝で優勝した古賀ジェレミー(中央) 写真/Creative 2/アフロ
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(スポーツライター:酒井 政人)

女子200m&400mは2年生スプリンターが躍動

 広島で行われた陸上競技のインターハイ。「暑さ対策」で例年とは異なるレギュレーションで実施されたが、大きな混乱もなく幕を閉じた。それどころかビッグレコードが次々と誕生した。

 男子100mは清水空跳(星稜2石川)が10秒00の高校記録&U18世界記録を樹立。女子800mでは久保凛(東大阪大敬愛3)が3連覇を成し遂げた。それから男子5000mで新妻遼己(西脇工3兵庫)が33年ぶりとなる日本人Vに輝いたのも印象的だった。

 他にも素晴らしいパフォーマンスが何度も飛び出した。正直、驚きの連続だった。そこで今夏にきらめいた“未来の日本代表候補たち”を紹介したい。

 まずは女子スプリント種目から。大会2日目の400mはバログン・ハル(市川2千葉)が“驚異的な進化”を遂げた。昨季までは200mがメイン種目で、今季から400mに本格参戦。最初のレースは56秒台だったが、県大会で55秒24、南関東大会で53秒73とタイムを上げる。そして全国の舞台で53秒07を叩き出したのだ。

 高2最高(53秒40/青山聖佳)と大会記録(53秒30/石塚晴子)を塗り替えると、高校歴代でも3位に急上昇した。

「決勝は最後まで負けない気持ちで走れたのが良かった。自己ベストを大幅更新できましたし、大会新も出すことができてうれしいです。400mに慣れてきたのか、結構成長しましたね。ガムシャラに走るのではなく、レース構成を考えないといけないのが400mは面白いなと思っています。どんどん成長しているので、どんどん上げていきたい」

 バログンは大会4日目の女子200mも快走した。午前の予選を24秒26(+0.4)で1着通過すると、午後のタイムレース決勝は2組に登場。左ハムストリングスにダメージを抱えていたが、100mで優勝した松本真奈(広島皆実3)が1組で追い風参考ながら23秒55(+3.4)の好タイムをマークしたことで“やる気スイッチ”が入った。

「負けないぞ!と思いましたし、最後の1本なので気合を入れ直しました」とトップでコーナーを駆け抜けて、直線で他の選手たちを引き離す。大量リードでフィニッシュすると、会場がドカンと沸いた。

 高校記録(23秒45/齋藤愛美)を上回る23秒36(+2.2)をマークしたのだ。「一瞬ワーッとなったんですけど、追い風参考が悔しいです」とバログン。それでも自己ベスト(23秒77)を大幅に超えるような快走に笑顔を見せた。

「今までの努力の結果が出たかなと思います。風が良いときに走って、今度は高校記録を更新したいです。そして将来的にはオリンピックなど世界レベルで戦いたい」

 ナイジェリア人の両親を持ち、日本で生まれ育ったバログン。中学の頃からクラブチームで活動して、現在はクラブチームと部活動の両方で練習しているという。妹・イズミは6月に女子100mで中2歴代5位の11秒93(+1.8)をマーク。姉妹ともに注目だ。