イラスト:NORIMA/イメージマート
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 NHK大河ドラマ『べらぼう』で主役を務める、江戸時代中期に吉原で生まれ育った蔦屋重三郎(つたや じゅうざぶろう)。その波瀾万丈な生涯が描かれて話題になっている。7月20日は参議院議員選挙の開票特番のため放送は休止。次回(7月27日)の放送では、身請けが決まったばかりの誰袖(たがそで)花魁が、どんな運命をたどるのかに焦点が当てられることになりそうだ。そこで今回は吉原遊女の身請けについて、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)

「2つの史実」を巧みに結び付けたドラマの脚色

 前回放送が田沼意次の息子・意知(おきとも)が佐野政言(まさこと)によって斬られるシーンで終わり、一体これからどうなるのか……というタイミングで、参議院議員選挙の影響で放送は休止。『べらぼう』を毎週楽しみにしている視聴者にとっては、長い2週間となったことだろう。

 ドラマでの意知は、誰よりも政言の処遇をきちんと考えていただけに、事件はより悲劇性を帯びてくる。意知と政言がそれぞれどのような最期を迎えるのかが気になるところだが、精神状態が心配されるのが、意知の父である意次と、意知と恋仲にあった花魁の誰袖である。

「意知は政言にいきなり斬られてその傷が原因で亡くなった」ことと、「花魁の誰袖は幕臣・土山宗次郎(つちやま そうじろう)に大金で身請けされた」ことは、ともに史実だ。

 ドラマではさらに「誰袖花魁は、表向きは土山の妾としながら、実は意知と愛し合っていた」という要素を加えている。つまり、田沼政治への不満が高まる中、意知が花魁を身請けしたとなれば、庶民から反発されてしまう。そこで、カモフラージュとして土山に身請けを頼んだという設定だ。誰袖花魁と意知を特別な関係にすることで、政言による傷害事件により奥行きを持たせている。

 最愛の意知と結ばれた途端に、別れを迎えることになった誰袖。その胸中を思うと、なんともつらいが、誰袖が望んだ「身請け」とはどんなものだったのだろうか。