米国株式相場は強気の展開が続いてきたが…。写真はニューヨーク証券取引所(写真:ロイター/アフロ)
米国の株式市場は最高値圏で推移しています。しかし、それは持続的なのでしょうか。シカゴ連銀の最新データを見る限り、異常なまでのマネー供給が続いていることでもたらされたものに見えます。実体経済の裏付けに乏しい危険な状況にトランプ大統領の減税・利下げ政策がさらに拍車をかける可能性があります。米国経済のリスクとは――。
(市岡 繁男:相場研究家)
FRBが引き締めに動いてきたのに超緩和が続くワケ
シカゴ連銀は毎週、金融状況指数を更新しています。これは銀行貸出や短期金融市場など金融活動の指標をもとに、全米の資金需給環境を数値化したものです。
このデータによると、現在(日本時間7月17日時点)は調査対象の105項目中、101項目が金融緩和を示しており、極めて緩和的です。そして、そんな状態はもう1年半以上も続いており、この指数に連動する形で株価も上昇してきました(図1)。
【図1】出所:シカゴ連銀
この間、FRB(米連邦準備理事会)は11回も利上げすると同時に、量的引き締め(QT)も行い、インフレ要因となるマネーの縮小に努めてきました。それなのに超緩和状態が続いているのは、政府による国債、なかでも短期国債(T-Bill)の増発が要因だと思われます。
米国では国債は金融先物取引の担保として認められています。なかでも価格変動リスクが小さいT-Billは担保として多用されており、レバレッジを効かせることで現金以上のマネー増発効果が生じています。
FRBが利上げを開始した2022年3月以降、マネタリーベースは0.5兆ドル縮小しましたが、その一方で、T-Billは2.1兆ドル増加しました。つまりFRBの金融引き締めにもかかわらず、一国全体の流動性は1.6兆ドル拡大し、その増加マネーの受け皿となった株式の時価総額は14兆ドルも膨らみました(図2)。
【図2】出所:FRB、米財務省