銀貨30枚でイエスをローマ兵に売り渡したユダ(写真:Mary Evans Picture Library/アフロ)銀貨30枚でイエスをローマ兵に売り渡したユダ(写真:Mary Evans Picture Library/アフロ)
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 世界一のベストセラーといわれる「聖書」。フォロワー約11万人の「上馬キリスト教会ツイッター部」の中の人として聖書をわかりやすく紹介するMAROさんは、聖書が誕生した2000年前から人間の心や営み、本質は現代社会とほとんど変わらないと言う。

 現代社会にいるあらゆる「残念な人」は、2000年前に記された聖書にもだいたい登場している。偉人と思われている人の「残念な一面」とは。

*この記事は、『聖書の中の残念な人たち』(笠間書院)の内容を一部抜粋・編集しました。

「今日の10円か、明日の100円か」なんてことは仕事をする上でよく言われます。今日の10円を得るために明日の100円を逃すようなことは、ビジネスとして良くありません。「木を見て森を見ず」なんてこともよく言われます。

 皆様の周りにもいるのではないでしょうか、小さな利害に囚われて、もっと大きなチャンスをないがしろにしてしまうような人。聖書の中で「裏切り者」として有名なユダも、実はそんな人だったのではないかと思います。

 クリスチャンでない方であっても「ユダ」という名前は、皆さんどこかで聞いたことがあるでしょう。ユダはイエス直々に12人の使徒として選ばれたのにもかかわらず、銀貨30枚でイエスをローマ兵に売り渡しました。

 銀貨30枚というのは、現代日本の価値に直すとだいたい90万円くらいだと言われています。大金と言えば大金ですけれど、その額で大切な師匠を裏切るとなると「うーん、ちょっと安くない?」なんて思ったりもします。

 ユダは「目の前の現実を、少しでも良くしたい」と考えていました。だからとある女性がイエスの頭に高価な油をかけたとき、「その油を売ればどれだけの人が楽になるのか!」と怒りました。

 しかし、もしその油を本当に売って貧しい人に施したとしても、その人たちが食べられるのは短い期間だけです。本質的な解決にはなりません。

 現代でも、たとえば貧しい国にただ食糧を送ることは根本的な援助にはなりません。食糧は食べてしまえば終わりですから、大切なのはそれよりも食糧の作り方を教え、そのためのインフラを整えることです。

 イエスは「人間が幸せに生きる方法」を伝えようとしていたのに対し、ユダは「人間の一時的な幸せ」を求めていたんです。「貧しさを解消してくれ!」と求めるユダに対し、イエス様は「貧しくても人間は幸せになれる」と言うのですから、両者がすれ違うのも無理はありません。

 現代を生きる多くの方は、実はユダ型の価値観で生きているのではないでしょうか。