期待される効果と恩恵

 この方針転換は、米エヌビディア、米マイクロソフト、米オラクルといった大手ハイテク企業から歓迎されている。

 これらの企業は、バイデン前政権の規制が「主たる標的である中国の動きを大きく妨げるのではなく、むしろ米企業の国外でのビジネス機会を奪うものだ」と批判していた。

 今後、輸出上限が設けられていた国々への先端AI半導体の供給が円滑に進めば、関連企業には収益拡大の機会がもたらされる。

 実際に5月初旬の方針転換の報道を受け、エヌビディア株が一時3%以上上昇するなど、市場は好意的な反応を示した。手続きの簡素化は、企業側の負担軽減にも寄与すると市場は期待している。

「個別の二国間協定」や「国際的ライセンス制度」、代替案の行

 新規制の具体的な内容はまだ固まっておらず、米商務省報道官も策定の時期については明言を避けた。関係者によると数カ月を要する可能性がある。

 米国にとっての最大の課題は、技術革新と産業競争力を維持・強化しつつ、中国などの懸念国への先端技術流出をいかに阻止するかだ。

 トランプ政権内では、階層型システムに代えて、各国との個別の二国間協定や、より広範な国際的ライセンス制度を導入する案などが検討されている。これにより、各国の事情に応じた柔軟な対応を目指すとみられる。

 一方で、国家安全保障上の懸念は依然として強い。

 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、米商務省産業安全保障局(BIS)は別途、第三国を経由した中国への半導体迂回輸出の取り締まり強化や、米国の先端半導体を用いた中国AIモデルの訓練への警告などを計画している。

 多くの業界関係者は、規制の枠組みが変わったとしても、何らかの形で厳格な輸出管理は継続されるとみている。

 そうした中、新規制の内容とその具体的な運用法に注目が集まる。

 規制確定の遅れが業界に与えてきた不透明感が、今回の見直しによって解消に向かうかどうかも焦点となる。

 (参考・関連記事)「トランプ政権、エヌビディア製AI半導体の対中輸出を厳格化 規制回避の「H20」も対象に | JBpress (ジェイビープレス)