半導体装置の維持管理を巡る規制強化

 こうした中、米ブルームバーグ通信は、トランプ政権が中国に対する半導体輸出規制の強化を狙っていると報じている。バイデン前政権下で始まった「技術封鎖」を継承し、さらに拡大する動きとみられる。

 関係者によると、トランプ政権の高官は最近、日本とオランダの当局者と会談し、東京エレクトロンやオランダASMLの技術者による中国での半導体製造装置の維持管理を制限する案について協議した。米政府が米国の半導体製造装置メーカー、ラムリサーチやKLA、アプライドマテリアルズに課している制限と同様の措置を、同盟国にも適用したい考えのようだ。

エヌビディア製AIチップの輸出規制強化も視野に

 トランプ政権では、特定の中国企業に対する新たな制裁措置についての議論も進められている。関係者によれば、一部の高官は、エヌビディアが中国向けに設計した半導体の輸出制限をより厳しくすることを検討している。

 バイデン政権時代に導入されたルールの1つには、いわゆる「AI拡散ルール」がある。これは世界各国を3つのカテゴリーに分けて、それぞれ個別の基準で輸出管理を行うというものだ。このとき新設した「ティア2」というカテゴリーの対象国については、GPUの輸出を年間1700基まで許認可不要にした一方で、米当局が数量と輸出先を詳しく把握できるようにした。

 このティア2には、東南アジア諸国や中東諸国などの約120カ国が含まれる。これらの国々を経由して、中国に米国の先端技術が流入するのを防ぐことがその狙いである。先ごろは、ディープシークがシンガポールを経由してエヌビディアの先端GPUを購入した疑いがあるとして、米当局が調査していると報じられた。加えて、シンガポール当局がこの事案に関係するとみられる3人の男を起訴したと、地元メディアが報じた。現トランプ政権では、この許認可不要の基準を引き下げる案も出ているようだ。

 トランプ政権の一部の当局者は、中国・華為技術(ファーウェイ)とそのパートナー企業である、半導体ファウンドリー(受託生産)の中国・中芯国際集成電路製造(SMIC)に対する規制を強化したい考えだ。

 米政府の規制強化策が正式に発動されるまでには数カ月を要するとみられる。トランプ政権は現在、主要な政府機関の人事を固めている最中である。今後は、その進展と並行して、具体的な政策方針が明らかになるだろう。もっとも、同盟国がトランプ新政権の方針にどこまで協力するかは依然不透明である。