そのため李在明氏陣営も、従来の反米姿勢を強調したままでは大統領選になった時に有権者の支持を得られないということで、路線変更に急ハンドルを切っている。

 そうでなくても、3月4日のトランプ大統領は施政方針演説の中で「韓国の関税は米国の4倍である」と述べ、これに韓国は手の打ちようがないのが現実である。

 トランプ大統領と同大統領に忠誠を誓う側近を、どう説得し、韓国に対する圧力を和らげていくのか。それが目下の韓国の緊急課題なのだが、現在の大統領代行体制ではトランプ政権とのパイプがないのが実情で、さらにこれから韓国が次期大統領選挙に突入すれば、その間に韓国には不利な決定がされる可能性も排除できない。

 そして、次期大統領の最有力候補である李在明氏の米国に関する発言は、トランプ大統領とその周辺にとって韓国という国家についての認識を否定的なものにすることは避けられず、厳しい状況にある。

過去の「反米発言」がここにきて仇に

 李在明氏の反米姿勢は米国や世界で広く知られている。

 李在明氏のもっとも代表的な反米発言は、2017年7月に、大韓民国は「親日勢力が米占領軍と合作して成立した国」であり、「問題は米軍が朝鮮半島から撤収しないこと」と述べたものである。この発言はあたかも在韓米軍が悪玉であるかのような言い方だ。

「李在明大統領」となれば、米韓安保協力に大打撃となるだろう。トランプ大統領は、韓国が独立志向を強めれば、在韓米軍の撤退を持ち出す可能性もある。

 トランプ大統領は、韓国を「富裕国」と呼んだ。防衛公約の履行の代価として現在は年間10億ドル程度負担している韓国に対し、「在韓米軍の防衛費として年間100億ドルを負担すべき」と言ってくる可能性も指摘されている。

 韓国が在韓米軍駐留経費の大幅増額に応じなければ、トランプ大統領は「軍を引き上げる」と言って脅迫するだろう。これまでの李在明の発言が仇となり、韓国は要求を吞まされることになりかねない。

 また、李在明氏についてしばしば指摘される親中発言、北朝鮮に対する融和的な発言も米国の立場とは相容れないものである。

 米ヘリテージ財団のブルース・クリングナー上席研究員は、米政府系放送ボイス・オブ・アメリカでの対談において「李在明代表はインド・太平洋地域での中国の行動を『ありがたく思うべきだ』と言った。また、『韓国は台湾有事にいかなる役割もしてはならない』とも言った」と懸念を表明した。

 英国フィナンシャル・タイムズは李代表の外交観について、「北朝鮮とロシアに対し、より融和的な姿勢を取るだろう」と予測し、「(李は)韓中関係が危機にひんしていた時、駐韓中国大使と一緒に公の場に現れて批判を浴びた」とネガティブに紹介した。

 米国のウクライナへの支援と比較しても米国による韓国へのそれは絶大である。李在明氏の発言にトランプ氏が怒るのは当然で、対韓要求は強いものになるのではないか。