視聴者の想像力に委ねる作風
このドラマの大きな特徴の1つは説明過多を避けたところ。視聴者の想像力に委ねた。近年は何から何まで説明するドラマが多すぎるが、それでは興ざめとなりかねない。
鉄平には自分の身の安全や幸福のみを考え、リサと誠を見捨てるという選択肢もあった。なにしろ鉄平は殺人に一切関わっていないのだ。しかし、鉄平という男の気性を思うと、それは考えられなかった。
鉄平はずっと友人思い。外勤職員になってからは職員のことばかり考えていた。また、長崎大の学費を父親の一平(國村隼)と一緒に出してくれた進平に深く感謝していた。進平の妻と子供を見捨てるなんて、あり得ない。
かくして端島を出たあとの鉄平は逃亡者生活を送る。残念ながら、これが鉄平の宿命だった。運命の歯車は1度狂い出すと、止まらなくなってしまう。抗えない。朝子への連絡も避けた。
玲央はいづみと端島に行ったあと、いづみの息子・和馬(尾美としのり)に電話でこう伝える。
「過去の残骸を拾い集めにきているみたいで……」
玲央の言葉通りだった。いづみは鉄平が端島に残してったギヤマンを回収しようとしたり、実家の食堂に行こうとしたり。よくある話だが、そこからは何も生まれない。