鉄平の失踪で苦しんだ朝子の半生

 小船で端島を出るのは第1回の冒頭シーンと全く同じだ。ただし、第1回では小船の漕ぎ手が誰なのか視聴者には明かされなかった。実は漕ぎ手が鉄平だったところにこのドラマの座標軸がある。本人と朝子の悲劇の始まりである。

 端島から忽然と姿を消した鉄平に対し、島民たちは「鉄平とリナが駆け落ちした」と噂した。残念ながら、そう考えるのが自然だった。

 朝子は苦しんだ。鉄平は端島から消える直前、朝子に対し、あらたまって「今夜、話がある」と言っていたからだ。朝子にはそれがプロポーズのサインとしか思えなかった。

杉咲花(WireImage/ゲッティ/共同通信イメージズ)
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 鉄平が端島からいなくなってから50年余が過ぎ、いずみがその足跡を辿ると、やはり駆け落ちではなかったことが分かる。端島から消えた経緯を鉄平が書き記したノートを賢将が持っていたからだ。